進化するベースボール 統計学重視の流れは止められない

津田俊樹のスポーツ茶論

 ボールパークに二刀流が輝く。白刃一閃(いっせん)、切れ味の鋭さに息をのみ、高みをめざす若武者がいる。米大リーグ、エンゼルスで投打に活躍する大谷翔平。記録を塗り替え、記憶に残る選手として球史に足跡を刻もうとしている。

 選手の評価は何で決まるのか。監督、コーチのさじ加減によるなら、選手は納得しない。投手は勝ち星、奪三振、防御率、打者は打率、本塁打、打点が基本になるが、試合展開によっては記録にならないプレーで勝敗が決まることがある。大リーグでは、選手の貢献度をできる限り数値化しようと、新たな判断基準が生まれている。

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 その一つ「WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)」を紹介する。投手が1イニングに何人のランナーを出塁させたかを表す数値で、被安打と与えた四球の合計を投球回数で割る。死球と失策による出塁は除かれる。1・00未満ならトップクラスとなる。

 今シーズンの日本人先発投手陣をみると、大谷は1・18(防御率4・10)、ヤンキースの田中将大は1・00(4・39)、カブスのダルビッシュ有は1・57(6・00)、ドジャースの前田健太は1・40(4・02)=記録は日本時間7日現在。

 WHIPは分かりやすいがシンプル過ぎるといわれる。より複雑な指標として、代替選手に比べてどれだけチームの勝利に貢献したかを示す「WAR(Wins Above Replacement)」というデータがある。さまざまな角度から集めて球団側と代理人の契約交渉のテーブルに上げられる。

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 メジャーの「フライボール革命」の影響が日本球界にも広がり始めている。バッティングといえば、「ボールを上から強くたたけ」だった。ゴロを転がせば野手の失策や悪送球を誘うことができる。高校野球で、飛球を打ち上げると指導者から厳しく注意される。その常識が覆されようとしている。バットを下から出してフライを打ち上げろというのだから、驚きである。特殊なカメラ、レーダーによって、打球速度が158キロ以上で角度が30度前後ならば、ヒットの確率が高まる、という分析が出た。

 このデータに目を付けたのがアストロズ。徹底したフライ打ちで、2016年から17年のチーム打率が・247から・282、本塁打が198本から238本と、文字通り飛躍的に伸びた。他の追随を許さない攻撃力で、昨季、球団史上初めてワールドシリーズを制覇した。

 左右どちらかへ極端に寄った守備隊形、2番にパワーヒッターを置くなど今までのセオリーが崩れている。試合開始直前のミーティングで監督、コーチ、選手が野球経験のないアナリストのレクチャーに耳を傾けるチームさえある。デビュー間もない大谷に対しても各球団は投打の傾向を細部まで調べ上げて対策を練っている。

 2000年代に入ると、アスレチックスが統計学をもとにしたチーム編成「マネーボール」で価値観を変えた。他球団も追いつき、追い抜こうと分析、処理能力をアップさせ、頭脳戦は激しさを増している。「数字の独り歩き」との批判があるものの、流れは止められない。大谷はビッグデータという新たな難敵とも戦っている。日々、進化する「背番号17」に期待したい。