ASEAN 「自由の海」を訴え続けよ

主張

 中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題で、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議の議長声明に「懸念」の表現が復活した。

 懸念表明は、昨年11月の首脳会議で消え、「中国との関係改善に留意」と融和路線が強調されていた。復活は妥当な方向であり歓迎したい。

 今回の議長声明は、南シナ海での航行・飛行の自由をうたい、埋め立てなどの活動について「一部の首脳が表明した懸念に留意する」と記した。

 中国は、南シナ海をめぐる領有権主張が退けられた2年前の仲裁裁判所の裁定を無視し、軍事施設を増強している。

 南シナ海の沿岸国を含むASEANとして、中国の一方的海洋進出に異を唱え、身勝手な振る舞いを批判するのは当然である。

 もちろん、加盟国首脳の懸念表明が文書に明記されたからといって、中国が直ちに態度を改めることはなかろう。

 それにも増して、ASEANが力を信奉する中国の側に立つのか、日本などが唱える法の支配などの普遍的価値を尊重する側につくのかは大事だ。南シナ海をめぐる態度表明は、それを端的に示すものとして意味が大きい。

 ASEAN加盟国の多くは中国の籠絡に弱い存在だ。第一の理由は巨額の経済援助だろう。だが、そればかりではない。

 民主化の優等生と呼ばれたタイで、軍事政権が4年に及ぼうとしている。フィリピンのドゥテルテ政権は強引な薬物捜査を進め、カンボジア与党は総選挙を前に野党を排除した。

 欧米諸国はこうした強権的手法や人権軽視を厳しく批判する。自らが強権国家である中国は、これらの国々に寛容さをみせ、つけこむすきを見つける。

 日本はASEANの「対等のパートナー」として40年以上の関係を持つ。民主主義などの価値観の定着、拡大に向けて努力することは、外交原則の一つだ。

 欧米諸国のように突き放すやり方ではなく、各国の事情を理解し、民主化が進展する形で寄り添うことは必要だ。安倍晋三首相がいう「自由で開かれたインド太平洋戦略」で、ASEANは欠かせぬパートナーでもある。

 南シナ海問題は日本も避けて通れない課題だ。ASEANを引き寄せる努力に終わりはない。