高齢者と薬 多剤服用の被害を防ごう

主張

 薬を原因とする健康被害は、高齢者に出やすいことが分かってきた。特に75歳を超えると、腎機能が低下し、薬が効き過ぎたり、副作用が大きく出たりする。

 複数の疾患を持ち薬剤数が多くなると、相互作用による健康被害を起こす確率も高まる。厚生労働省は適正な使用の指針案をまとめたが、より慎重に処方をしていくことが必要である。

 指針で注意喚起の対象になっているのは不眠、高血圧、認知症、糖尿病、高脂血症など、ごく一般的な疾患の薬である。

 それぞれの疾患で薬品の名称を具体的に挙げ、処方の注意を明記した。妥当だろう。参考にしたのは、高齢者医療を専門とする「日本老年医学会」が、平成27年に作ったガイドラインだ。専門医らが関係者に理解や協力を求めながら方向性を示した。

 今後、厚労省は都道府県などを通じ、一般の医師や歯科医、薬剤師などに内容を周知する。いかに普及を図るかが課題である。

 例えば、不眠を訴える高齢者にはベンゾジアゼピン系の薬が処方されることが多い。だが、特に高齢者は転倒や認知機能低下のリスクがある。この種の薬は依存性があり、海外ではガイドラインで継続使用の期間を定めている。日本では漫然と使用する例がある。

 指針は医療職が使用することを想定している。同時に必要なのは、多くの薬を服用する患者の側が、自分にとって本当に必要があるのかを認識することだ。

 患者自身が薬をほしがることには、医師らも頭を悩ませる。薬を減らしたり、やめたりすることに消極的なケースもある。薬には利益だけでなく、不利益もあることを肝に銘じたい。

 複数の疾患で医療機関を掛け持ちする高齢者も多いが、薬はなるべく1カ所で受け取りたい。

 かかりつけ医、かかりつけ薬剤師を持つことが、薬による健康被害を避ける第一歩となる。お薬手帳の活用も重要だ。使用する市販薬も記入したい。

 ただし、素人判断で薬をやめたり、減らしたりしてはならない。急な中止で離脱症状を起こすものもあるからである。

 医師や薬剤師と、しっかりコミュニケーションを取る。そういう土壌は、医療職だけの努力では作れない。患者も一緒に取り組むことが欠かせない。