拉致問題の解決 いまこそ強い制裁を貫け

主張

 先の南北首脳会談で、金正恩朝鮮労働党委員長は「いつでも日本と対話を行う用意がある」と述べたという。韓国の文在寅大統領は日本人拉致問題を提起したと、安倍晋三首相に伝えた。

 なんとしてもこうした流れを、拉致問題の解決に結びつけてほしい。解決とは、被害者全員の帰国である。

 ただ現時点で、拉致問題での具体的進展は何もない。

 文氏の提起に対する北朝鮮側の反応は伝えられず、南北会談を受けた「板門店宣言」には、全く触れられなかった。対話は対話のためのものではなく、拉致問題の解決を前提としたものでなければ受け入れられない。北朝鮮側が必死の外交攻勢に出ているこの機を逃さぬため、いまこそ、政府は強硬姿勢を貫くべきである。

 北朝鮮を微笑(ほほえ)み外交に追い込んだのは、いうまでもなく日米が牽引(けんいん)した国際社会の制裁網である。核・生物・化学兵器とあらゆる弾道ミサイルの放棄、そして拉致問題の解決へ向けて具体的な行動がない限り、制裁を緩めてはならない。早まって動けば、それこそ北朝鮮の思うつぼである。

 その意味で不安を覚えるのは、まだ何も達成されない中で韓国の一部にみられるお祭り騒ぎであり、国内世論の緩みである。これに影響されたかのような「日本置き去り論」が代表的なものだ。

 拉致は、北朝鮮による残酷な国家犯罪である。

 米国をはじめとする国際世論を喚起し、正恩氏にこの解決を突きつけるためには、背景に国民の強い怒りを必要とする。

 日米首脳会談で安倍首相がトランプ米大統領に米朝首脳会談での拉致問題提起を求めたのは、被害者奪還への強い意志である。河野太郎外相がポンペオ米国務長官と会談し、拉致問題解決への協力を申し合わせたのも同様である。

 拉致被害者、横田めぐみさんの弟、拓也さんらは米国で国務省などを訪れ、「40年間、救いを待ち続ける拉致被害者や家族の痛み」を訴えた。全ては北朝鮮を動かすための懸命の努力である。

 被害者の帰国実現のため、米韓など国際社会の協力を求めることは当然である。他人任せといった批判は当たらない。そして最後は、日本政府が自ら、その交渉を完結させなくてはならない。そのための圧力の継続である。