【主張】脱走犯逮捕 緊急時の法整備が必要だ - 産経ニュース

【主張】脱走犯逮捕 緊急時の法整備が必要だ

 愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から脱走していた受刑者が、22日ぶりに広島市で逮捕された。
 潜伏先とみられていた広島県尾道市の向島の住民は、不安で不便な生活を強いられた。なぜ捜査が長引いたのか、検証が欠かせない。
 愛媛、広島両県警は延べ1万5千人以上の捜査員を動員して捜索を続けてきた。しかし島には多くの空き家があり、捜査の障害となった。立ち入りには所有者の承諾が必要で、連絡がつきにくかったためだ。
 実際に受刑者は泳いで島を出るまで、島内の別荘に潜んでいたと供述している。
 多数の所有者の意向を確認するという手順がなければ、早く解決していた可能性がある。
 空き家は全国的に増えており、犯罪の温床になるという指摘は以前からあった。空き家の利用法が検討されているが、治安の面からも議論する必要がある。
 持ち主がわからない空き家への捜索は、もっと簡単にできてよいのではないか。緊急時を意識した法の整備や運用が必要だ。
 テロリストや工作員が空き家に潜伏する可能性も否定できない。昨秋には、北朝鮮船の船長らが北海道の無人島の小屋を荒らす事件もあった。
 緊急時対応の議論では、災害時などに政府の一時的な権限強化を認める条項を憲法に入れることにすら、根強い反対論がある。
 しかし異常な事態は平時でも起こる。災害だけではない。今回のように犯罪が社会の広範囲に不安を与えることもある。事件が起こってからでは遅い。
 また、今回舞台になった作業場は塀や鉄格子のない開放的な矯正施設だった。受刑態度が良く罪が比較的軽い者が入る。こうした施設は全国に4カ所ある。
 事件を受けて法務省では、開放施設での監視体制を話し合う検討委員会を設置した。顔認証技術や衛星利用測位システム(GPS)の利用が議論されている。再発防止策は必要である。
 しかし開放施設では受刑者が社会に近い環境で刑務作業を行うため、スムーズに社会復帰できるとされる。今回の作業場でも、出所した後に再び刑務所に戻る割合は他の施設より大幅に低かった。
 自立を促す作業場の長所までなくしてしまってはならない。