【産経抄】4月27日 - 産経ニュース

【産経抄】4月27日

 「北朝鮮がアメリカに『ごろつき国家』と呼ばれる、おどしとゆすりで生きる国になったのはいつからだろうか」。長年、北朝鮮の人権問題を追い続けたジャーナリストの萩原遼さんは、ソウル五輪の開催された1988年が転換点となった、と見る。
 ▼北朝鮮がいくら不参加を要請しても、中国もソ連も他の社会主義国も耳を貸さなかった。孤立を深める北朝鮮にとって、体制維持のために残されていたのは、核カードだけだった(『拉致と核と餓死の国北朝鮮』)。
 ▼その北朝鮮が今年の平昌五輪では一転して「ほほえみ外交」を繰り広げた。とうとう韓国の文在寅大統領と、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による南北首脳会談の日を迎えた。昨年12月に80歳で亡くなった萩原さんが知ったら、どう評価しただろう。
 ▼焦点となるのは、北朝鮮の非核化をめぐる合意である。さらに文大統領は安倍晋三首相との電話会談で、拉致問題を議題にすると明言した。ただ、萩原さんに言わせれば「国内でほしいままに殺人を犯す」北朝鮮の人権問題については、踏み込むつもりはなさそうだ。
 ▼話題には事欠かない。北朝鮮の最高指導者として初めて韓国の地を踏む正恩氏が、徒歩で軍事境界線を越えるのもその一つだ。夕食会のデザートに添えられる板チョコレートには、朝鮮半島とともに韓国と北朝鮮が「独島(トクト)」と称する竹島が描かれる。昨年、トランプ米大統領をもてなす晩餐(ばんさん)会で出た「独島エビ」料理を思い出す。反日宣伝ショーの再演である。
 ▼平成14年の日朝首脳会談では、小泉純一郎首相は日本から平壌に持ち込んだ弁当にほとんど口をつけられなかった。今回の首脳会談にそんな緊迫感を感じないのが、何よりの気がかりである。