4月25日

産経抄

 広島カープの衣笠祥雄選手のニックネーム「鉄人」は、漫画「鉄人28号」に由来する。当初は背番号28をつけていた。もちろん、2215という偉大な連続試合出場記録を打ち立てられたのは、体が人一倍頑丈だったからだ。

 ▼最大のピンチが訪れたのは、昭和54年8月の対巨人戦である。西本聖投手から死球を受け、左肩甲骨を骨折、全治2週間と診断された。ところが翌日に代打で出場すると、江川卓投手の速球をフルスイングして3球三振する。「1球目はファンのため、2球目は自分のため、3球目は西本君のためにスイングしました」。試合後に名コメントを残すと、次の日にはフル出場を果たし、ファンを驚かせた。

 ▼「痛みはコントロールできる。それより不調でチームに迷惑をかけるのではないか、と気持ちが後ろ向きになると出られなくなる」。後に記録を破った大リーグのリプケン選手と会って話すと、まったく同じ考え方をしていたそうだ。62年の現役引退にも迷いはなかった。練習してもうまくならないと悟ったらすぐ辞めると、決めていた。

 ▼「どうしたらプロ野球に行けますか」。少年野球で保護者から聞かれると戸惑った。野球人生を振り返ると、どんなに苦しい時でも、野球は楽しかったし好きだった、ただそれだけ、だったからだ。引退後も、才能豊かな後輩たちの活躍を見るのがうれしくてたまらない。

 ▼ただ先週、テレビの野球解説中に声がかすれ、視聴者から問い合わせが相次いでいた。鉄人復活の望みもかなわず、昨日訃報が届いた。大リーグでも二刀流を貫く大谷翔平選手の活躍を、はらはらしながら見守っていた。

 ▼何より黄金時代の輝きを取り戻した、赤ヘル軍団の日本一を見届けたかっただろう。