偉人たちの師 論説副委員長・沢辺隆雄

風を読む
報道陣に対応したハリルホジッチ氏=羽田空港(斎藤浩一撮影)

 監督が代わったからといって野球ほど影響はないのでは? いっそのこと某解説者を抜擢(ばってき)したら…。先日、サッカー日本代表監督の交代劇に、論説委員室のプロ野球ファン同士で雑談していると、運動担当の先輩から怒られた。

 ピッチ(グラウンド)だけ見れば、選手交代の機会など野球ほど多くなく、選手まかせに見えるかもしれない。が、選手起用や戦術など試合に至る監督の役割は絶大だ。あまり書くと筆者の無知が知れるのでやめる(ここまででもアウトか)。

 監督を教師に置き換えてみたい。学校で、親より長い時間、子供たちの様子を見ている。役割は重い。

 そんなとき、歴史研究家の岡田幹彦氏の近著『日本の偉人物語2』(光明思想社)が、上杉鷹山、吉田松陰、嘉納治五郎を取り上げており、興味深く読んだ。世界でも知られた3人の偉人だが、若い世代には意外に知られていないことがある。同書では、多くのエピソードを交え、生い立ちから分かりやすく読ませてくれる。

 江戸後期、米沢藩を立て直した名君、上杉鷹山はすぐれた教育者でもあった。家庭教育を重視し、慈愛や諫言(かんげん)を快く受け入れることなどを後進に説いた。

 その鷹山にもすぐれた師がいた。一人は出身の九州・秋月藩の家老だった三好重道で、忠孝や藩主としての心構えを説いた文章を送り、鷹山は生涯、座右にした。もう一人は鷹山が10代の頃から学んだ学者、細井平洲で、「万民の父母」としての藩主の心構えを教えたという。

 柔道の創始者、嘉納治五郎についても明治のすぐれた教育者だったと指摘する。柔道の弟子には「姿三四郎」のモデル、西郷四郎らがいる。

 嘉納は若くして学習院教授や第五高等中学校校長などを経て高等師範学校の校長に就き、教員養成に心血を注いだ。同書では「教育のこと、天下これより偉なるはなし」「教育のこと、天下これより楽しきはなし」という嘉納の言葉も紹介している。教師、指導者だけでなく多くの人に知ってほしい言葉だ。