長い人生を充実させるリカレント教育

中江有里の直球&曲球

 人生100年時代といわれる今、病気や年金にまつわる不安を数えるとやりきれない。だが一方で、元気な高齢者の方もたくさんおられる。体が元気なだけではなく、向上心や好奇心いっぱいに生きている姿はすべての世代の励みになる。そうした方々をお見かけする機会があった。

 先月行われた放送大学学位記授与式には北は北海道、南は沖縄から卒業生と親族の方々が集まった。昭和58年に設置された私立の通信制大学である放送大学の卒業生は圧倒的に中高年が多い。仕事に定年はあっても、学ぶ気持ちに定年はない。

 一度社会に出ても、必要に応じて教育機関で学び直すことができるシステムをリカレント教育と呼ぶが、こうした生涯学習を実践する場所は日本に多くある。

 私自身も30代半ばで法政大学の通信教育部に入学し、日本文学について4年間学んだ。当時の学友は年齢も経歴もバラバラであったが、皆自主的に学ぼうと入学した人たちばかりで、学友の真剣な授業態度に大いに刺激を受けた。

 ただ仕事との両立に悩む人も多かった。必須の対面授業や試験や面接を受けるためには職場の理解が必須となる。しかし人手が足りなかったり、リカレント教育への理解が及ばなかったり、致し方なく退学を選ぶ人もいた。

 しかし、今という時代、リカレント教育は重要だ。

 終身雇用システムなら自動的にある程度のスキルが身についたが、働き方のスタイルは変わりつつある現在、働く人がそれぞれのスキルを磨いていく必要がある。それによって企業はより発展し、スキルを身につけた方もキャリアアップの道が開ける。何より学び続けることは、人の好奇心を刺激し、さらにスキルを磨くことにつながる。

 主婦であっても、定年後であっても、学ぶ意欲を失わなければ人は成長をやめない。また学ぶ過程で人とのコミュニケーションも生まれ、人間関係も広がっていく。

 個々の長い人生を充実させるための生涯教育は、これからの国の力にもなり得るだろう。

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【プロフィル】中江有里

 なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。