4月4日

産経抄

 2013年に公開されて、アカデミー賞7冠を獲得したハリウッド映画「ゼロ・グラビティ」は、とりわけ中国で人気を博した。宇宙空間に投げ出された米国の女性飛行士を救ったのが、中国の宇宙ステーションだったからだ。

 ▼彼女は、「天宮」と名付けられた無人のステーション内で、漢字表記の装置にとまどいながらも、宇宙船「神舟」を切り離し、地球への帰還を果たす。実際の「天宮1号」は、11年に打ち上げられた。

 ▼全長10・5メートル、重さ8・5トンの無人宇宙実験室である。翌年には、3人の宇宙飛行士が乗り込んだ宇宙船が、有人ドッキングに成功する。中国初の女性飛行士が含まれており、中国メディアは「空飛ぶ女神」などともてはやしたものだ。

 ▼その天宮1号が飛行高度を下げて大気圏に再突入し、2日、南太平洋に落下した。大部分は燃え尽き、心配されていた被害は、出なかったもようである。もっとも「杞憂(きゆう)」に終わってよかった、では済まされない。

 ▼映画で「悪役」となったのは、宇宙空間のデブリ(ゴミ)だった。ミサイルで破壊された人工衛星の破片が、船外活動をしていた宇宙飛行士に襲いかかった。実際、地球を猛スピードで周回中のデブリは数万個に達し、宇宙飛行士にとって脅威となっている。天宮1号は、すでに2年前から制御不能に陥っていたと、欧米の専門家は指摘していた。つまり、巨大なゴミと化していたわけだ。

 ▼しかし、中国はそれを頑として認めない。「宇宙強国」をめざす中国にとって、メンツにかかわる事柄らしい。情報公開が十分でなければ、宇宙開発を協力して進めるのは難しい。やはり中国が米国の宇宙飛行士を救出するのは、今のところフィクションの中だけの美談らしい。