3月31日

産経抄

 「今こそ、最後のチャンスだと思っています」。30日、安倍晋三首相と面会した拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さんはこう訴えた。わずか13歳のめぐみさんが北朝鮮に拉致されてから、40年以上の歳月が流れている。北の国際社会への歩み寄りという、ようやく巡ってきたこの機を逃すわけにはいかない。

 ▼北朝鮮情勢そっちのけで国会が騒いだ森友学園問題では、安倍首相の次の答弁が火に油を注ぎ、野党を勢いづかせたとの指摘がある。「私や妻がもし関わっていたのであれば、総理大臣を辞める」。だが、安倍首相は拉致問題でも同様の発言をしている。

 ▼平成28年1月の衆院予算委員会で、「拉致を使ってのし上がったのか」などと追及する民主党議員(当時)に対し、安倍首相はこう明言した。「私が言っていることが真実だとバッジをかけて言う。違っていたら国会議員を辞める」。

 ▼ところがこの時は、安倍首相が自らの進退にまで言及したにもかかわらず、新聞各紙も野党もほとんど関心を示さなかった。拉致問題で安倍首相を追及しても、返り討ちに遭うのが関の山だと思ったのか。

 ▼「(活動を始めた)当時は拉致問題は全く誰からも顧みられなかったし、私もずいぶん批判を受けた」。同委で安倍首相は、過去の国会の残念な実態も振り返っていた。拉致問題に取り組んでも票にならないうえに、北朝鮮の機嫌を損ねるからか。

 ▼国会では今も、「北朝鮮には補償も何もしていないのだから、9人、10人返せとばかり言ってもフェアじゃない」と言い放った議員や、拉致実行犯の助命・釈放嘆願書に署名した議員らが、大手を振って歩いている。本来は彼らこそ、先頭に立って拉致被害者奪還に力を尽くすべきである。