ひたひたと迫る危機をるため「北」の漂着船の展示望む

葛城奈海の直球&曲球
日本海の大和堆周辺海域に出現した北朝鮮籍の木造船=平成29年9月(海上保安庁提供)

 砂浜に打ち上げられた木造船は波が寄せるごとに、かろうじてつながっている船の横っ腹が開き、また閉じという異様な光景を繰り返していた。金沢市安原海岸に1月10日に漂着したこの船からは、7遺体が発見されている。

 日本海側への北朝鮮船の漂着が相次いでいる。海上保安庁によると、朝鮮半島からの漂着・漂流は平成26年65件▽27年45件▽28年66件と推移したが、29年は過去最多の104件となり、内45件が12月に集中。「冬季漁獲戦闘」の名の下に、荒れる日本海へ出漁し、命を落とした漁民たちには哀悼の意をささげたい。

 今月2日、特定失踪者問題調査会(荒木和博代表)による石川県特別検証に同行、救う会石川の大口英夫事務局長の案内で3市町を回り、5隻の漂着船を検証した。

 いずれも平底の木造船で、もっとも小さなものは、志賀町西海の岩がちな浜に打ち上げられた長さ約5・6メートルの船。手漕(こ)ぎボートを僅かに大きくした程度で、これで本当に冬の日本海に出たのかと疑念が湧く。最も大きかったのは加賀市美岬町の波消しブロックに漂着した長さ約18メートルの船で、甲板以下はほぼ完全な姿、船倉には救命胴衣も残存していた。遺体はなかったというが、気付かれないうちに乗員が上陸した疑いも拭い去れない。事実、秋田県由利本荘市では昨秋、乗員8人のうちの2人が付近の住宅のインターホンを鳴らしたことにより漂着が発覚している。

 海保によると、昨年の漂着・漂流船のうち遺体確認は35体、生存者は42人。だが、これ以外に生存者がいなかったと断言できるだろうか。工作員であれば助けを求めることもあるまい。地域住民たちは不安を抱きながら、その危機感が全国的に共有されないことにさらなる不安を募らせている。

 また、生存者は貴重な情報源だ。摩擦を恐れ早期に帰国させるのではなく腰を据えて拉致被害者情報はじめ北の生情報を収集すべきである。

 漂着船は、捜査が終わり次第、自治体が環境省の予算で処分することになっている。が、百聞は一見にしかず。ひたひたと迫る危機を少しでも実感するためにも、漂着船の東京、大阪などでの展示を望む。

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【プロフィル】葛城奈海

 かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、キャスター、俳優。昭和45年東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会広報部会長、林政審議会委員。著書(共著)に『国防女子が行く』(ビジネス社)。