【産経抄】3月29日 - 産経ニュース

【産経抄】3月29日

 「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」でおなじみの「カルビー」は、もともとのんびりした社風で知られていた。松本晃(あきら)さんは、そこに旋風を巻き起こした。
 ▼米国企業の日本法人トップとして、売り上げを3・5倍に伸ばした実績を持つ。手腕を創業家に見込まれ、平成21年に会長として招かれた。いわゆる「プロ経営者」である。
 ▼松本さんはまず、穀物を加工したシリアルにドライフルーツを交ぜた商品に目をつけた。商社マン時代、米国出張のたびに食べていたシリアルに比べて断然うまい。しかも手軽で健康にもよさそうだ。名前を「フルグラ」と変え、「朝食革命」のキャッチフレーズを打ち出すと、たちまち大ヒット商品となった。
 ▼「この会社1世紀遅れているね」「女性の活躍なしにカルビーの将来はない」。女性管理職比率がわずか5%にすぎないと知ると、こう言い放った。現在は約25%にまで上がっている。なにしろ同じ能力なら女性を優先して登用するのだから、社内の反発は強かった。それでも、松本さんは少しもひるまない。
 ▼昨年からは、勤務場所や時間の制限をなくす「モバイルワーク」が導入されている。つまり成果さえ出せば、会社に出てくる必要はない。無駄な会議や資料作りをやめて、お客さんのところに行きなさい。松本さんはハッパをかけ続けた。「働き方改革」は、安倍晋三政権の看板政策でありながら、なかなか前に進まない。この会社ではとっくに実現していた。
 ▼在任9年で売上高は7割も増えた。その立役者の突然の退任発表に、驚きの声が上がっている。日経新聞は、「改革者の退任 カルビー試練」の見出しを付けて報じた。70歳のプロ経営者の冥利(みょうり)に尽きるというものだろう。