ふるさとのことを知る 論説副委員長・沢辺隆雄

風を読む

 本紙の東京都内版に「東京五輪 あと○○日」のカウントダウンとともに、社会部記者らが自由に綴(つづ)る名物コラムがある。記者の似顔絵が付き、私のコラムよりおもしろい。18日付は花房壮記者「郷土の偉人の話を聞きたい」で、民間団体の歴史用語「精選案」を取り上げていた。

 坂本龍馬らが外れた用語案をめぐり武田信玄のふるさと、山梨県の知事が文部科学省を訪れ教科書から消さないよう要望した。偉人の「影響力」は強いという。花房記者は、偉人伝は「生徒の行動力や克己心などを育む契機」になると、改めて教育的効果を指摘していた。

 実際、郷土の偉人やふるさとについて学ぶ教育が注目され、独自の教材などをつくる教育委員会が増えている。地域の物語を、祖父母などから世代を超え語り継ぐ機会が減っているとの危機感もあるのだろう。

 東日本大震災から7年が過ぎ、福島県双葉郡の8町村が進める「ふるさと創造学」が注目されている。浪江・双葉・大熊・富岡・楢葉・広野の6町と、葛尾・川内の2村では、大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で避難、転校を余儀なくされるなど、子供たちは厳しい生活、教育環境で学んでいる。

 ふるさと創造学は「総合的な学習の時間」などを活用し、伝統文化や歴史、自然、まちづくりなど学校内外の人々と連携して学ぶ。普段、何げなく口にしていた食べ物が、先人の知恵が詰め込まれた保存食だったことなどさまざまな発見がある。

 そうした子供たちの学びが「地域を勇気づける」という。その通りだろう。震災直後から避難所を手伝い、箱を机代わりに勉強するなど懸命な姿に大人も励まされてきた。

 桜にはまだ遠い2月、避難が続く学校を訪れる機会があった。三春町に移転していた葛尾村立葛尾小、中学校は今春、地元にやっと戻る学校の一つだ。

 村外に生活拠点を移した家庭も少なくない。数十キロ離れた学校へ通学バスで通う子供たちもいる。厳しい環境が続くが、「ふるさとに戻りたい」との願いは強い。息長く支援したい。