豊かな感性の子供が投票すると 3月2日

産経抄

 堀口大学に「小学生」と題した作品がある。「先生/植物学は嘘ですね/樹木もやはり笑ふのです/梅が一輪さきました」。詩人は子供になりきって、早春の風景を詠んでいる。

 ▼2020年東京五輪・パラリンピックの公式マスコットの決定は、彼らの豊かな感性にゆだねられた。小学校や特別支援学校を対象に行われた投票には、全体の8割近い1万6769校、20万5755学級が参加した。

 ▼もっとも多い票を集めたのは、大会エンブレムと同じ市松模様とサクラの花びらがあしらわれたキャラクターである。誰も文句をつける人はいない。新国立競技場の設計をめぐるトラブルや旧エンブレムの盗作疑惑など、五輪をめぐる過去のモヤモヤを吹き飛ばす結果となった。

 ▼学級単位の投票だったため、クラス内で話し合っていくうちに、自然に五輪についての理解も深まったことだろう。大会史上初めての試みは、大成功を収めたといっていい。何より、結果を知って喜んだり悔しがったりする、子供たちの表情がよかった。

 ▼同じ日に予算案を可決した衆院本会議では、自民党議員が隣席の議員の賛成票を誤って投じて、票が無効となる珍事があった。子供たちの真剣な投票態度を見習ってほしいものだ。投票といえば、米国では政治を身近なものとして考える訓練の一環として、子供による模擬投票が盛んに行われている。

 ▼大統領選の前に、子供向け出版社大手スコラスティックが小中高校生を対象に実施する選挙もその一つである。注目度が高いのは、他のどんな世論調査より的中率が高いかららしい。1940年に始まって、これまで実際の選挙結果と違ったのは、48年と60年、そして2年前のトランプ氏の勝利だけである。