手柄も失敗も肉も皆で分かち合う

葛城奈海の直球&曲球

 「東京でも野生の鹿や猪(いのしし)が食べられる」と聞けば、意外に思う人も少なくないだろう。激増した鹿による森林被害を食い止めたいと、3年前に狩猟免許を取得した。昨年末に念願だった銃砲所持許可を得て、この2月、ハンターとして初出猟を果たした。

 朝暗いうちに家を出て、向かったのは東京都檜原(ひのはら)村。犬を使った伝統的な巻狩(まきがり)を行う檜原大物クラブ(平野公一代表)の猟に参加させていただいた。狩猟への理解促進と後継者育成を図ろうと数年前から村外のハンターや見学者も積極的に受け入れている同クラブは、猟歴半世紀以上の大ベテランから「狩りガール」までが集う、活気あふれる猟友会だ。まずは参加者十数人が一堂に会して持ち場を決め、それぞれ「タツマ」と呼ばれる配置につく。初心者の私もいきなりひとりタツマに配され、緊張しつつも、照準の練習などをしながら獲物を待つ。静寂に包まれた雪の杉木立に、時折リスだけが元気に動き回っている。

 と、視界の片隅に動くものが…雄鹿だ! てっきり獲物が出てくる前には犬が鳴くとばかり思っていたので油断していた。銃を構え安全装置を外して…とモタモタやっているうちに、鹿は姿を消した。後刻、先輩方から「タツマに立ったら決して気を抜いてはいけない」とご指南を受ける。この日を含め3回出猟したが、私が獲物を見たのはこのときだけ。貴重なチャンスを逃したという自覚は回を重ねるごとに深まった。

 撃ち損じても、解体した肉の分け前にはあずかることができる。目分量ながら分けっぷりの均等さには驚いた。なんでもこれが「山分け」の語源とか。それだけおのおのが等しく責任を負っているということなのだろう。メンバー最若手の平野佑樹さん(29)は「みんなに撃たせてもらっている」と話した。手柄も失敗も肉も皆で分かち合う。獲物の心臓の一部は山の神への感謝の印として小枝に刺してささげる。「クラブハウス」で猪や鹿料理の数々に舌鼓を打ちながら、いつしかそんな村落共同体の原風景を見るような檜原大物クラブそのものにも魅せられていた。

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【プロフィル】葛城奈海

 かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、キャスター、俳優。昭和45年東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会広報部会長、林政審議会委員。著書(共著)に『国防女子が行く』(ビジネス社)。