息吹き返す一方的な通商措置 論説副委員長・長谷川秀行

風を読む

 米通商代表部(USTR)が他国との通商問題を解決する手段として、世界貿易機関(WTO)の判断よりも国内法を優先する戦略を掲げたのは昨年3月のことだった。それがいよいよ実行段階に入ったのか。トランプ政権が、矢継ぎ早に強硬な通商カードを出してきた。

 先に商務省は、通商拡大法232条に基づく鉄鋼などの輸入制限をトランプ大統領に勧告した。4月中旬までに判断するというが、発動すれば1982年の対リビア以来となる。

 米政権はこれとは別に、通商法201条に基づく太陽光パネルと洗濯機の緊急輸入制限(セーフガード)を発動すると発表した。こちらは16年ぶりだ。

 ほかにも中国の知的財産権侵害について、かつての日米貿易摩擦時に度々使われた通商法301条で調査中である。

 それにしても、箪笥(たんす)の奥からいろんな法律や条文を引っ張り出してきたものだ。いずれも貿易相手国への一方的な制裁を可能とするツールだが、その発動は、95年に発足したWTOのルールに反する恐れがある。

 商務省案で日本製も対象に含まれた先の通商拡大法に話を戻すと、これは50年以上も前のケネディ政権時にできた法律である。80年代には工作機械の貿易で232条をちらつかせ、日本と台湾に対米輸出の自主規制をのませたこともあった。

 だが、今では自主規制という手法自体がWTOで禁じられている。今さらこれを恫喝(どうかつ)の材料に使っても、貿易相手国の自主規制は望めない。

 鉄鋼の貿易摩擦で思い出すのは、ブッシュ政権時の2002年に発動したセーフガードである。通商法201条による産業保護策だったが、WTO協定違反と認定され、日本や欧州が報復関税へと動いたため、03年に撤廃を余儀なくされた。

 トランプ氏は、同じ共和党政権時に頓挫した輸入制限を自らの政権で成し遂げることにこだわりがあるのか。それを今秋の中間選挙への成果としたいのなら軟化は期待しにくい。行き着く先は、各国との間で報復が連鎖する貿易戦争である。