金メダルよりうれしい娘の成長 2月26日

産経抄
平昌冬季五輪で金メダルを獲得した日本選手。(上段左から)スピードスケート女子マススタートの高木菜那、フィギュアスケート男子の羽生結弦、スピードスケート女子500メートルの小平奈緒、(下段左から)スピードスケート女子団体追い抜きの菊池彩花、佐藤綾乃、高木美帆、高木菜那(共同)

 歌手の由紀さおりさんは、姉の声楽家、安田祥子(さちこ)さんと30年以上にわたって童謡や唱歌を歌い続けている。2人は、小学校時代から童謡歌手として競い合っていた。やがて姉はクラシック、妹は歌謡曲と別々の道を歩いていく。

 ▼「私のひつぎに入れるアルバムを作ってちょうだい」。母親の一言がきっかけだった。完成した童謡のCDを売るために考えついたのが、手作りのコンサートである。2人で歌うことが「親孝行になったかな」と、由紀さんは振り返る。

 ▼平昌冬季五輪が閉幕した。メダルラッシュに沸いた日本勢は、とりわけ兄弟、姉妹選手の活躍が目立った。ノルディック複合で銀メダルの渡部暁斗(あきと)選手(29)と善斗(よしと)選手(26)の兄弟。銅メダルのカーリング女子の吉田知那美(ちなみ)選手(26)、夕梨花(ゆりか)選手(24)の姉妹。

 ▼なかでも主役となったのは、2人で金銀銅5個のメダルを手にした高木菜那(なな)選手(25)と美帆(みほ)選手(23)の姉妹である。幼い頃に始めたスケートで、最初に頭角を現したのは、天才肌の妹だった。2010年バンクーバー五輪に妹が15歳で出場すると、姉は悔しさのあまり、「転んでしまえ」とまで念じた。

 ▼今大会でも先にメダリストとなったのは、妹である。女子団体追い抜きで、ようやく妹とともに表彰台のてっぺんに上ることができた。姉の菜那選手の口からまず出てきた言葉は、「メダルを両親にかけてあげたい」だった。妹の活躍だけでは、両親は自分に気兼ねしてしまう。ようやく素直に喜んでもらえる、との思いからだった。

 ▼そして新種目の女子マススタートでも金メダル。それでも姉は、「妹に追いつくくらいの選手になりたい」と謙虚だった。両親にとっては娘の心の成長が、メダル以上の親孝行だろう。