図書館と書店は本を守り、読者育成という立場では同じ

中江有里の直球&曲球
芥川賞受賞を記念して手づくりの横断幕を掲げる遠野市立図書館の職員ら=岩手県遠野市(石田征広撮影)

 子供の頃から学校の図書室、近隣の図書館によく足を運んだ。今も仕事や趣味で図書館や書店に行くが、ただ本を並べるだけでなく、カフェを併設したり、イベントスペースを設けたり、とさまざまな工夫を凝らした空間作りがなされていて、本好き以外の人々にも受け入れられているようだ。

 ところで昨秋、文芸春秋の松井清人社長が全国図書館大会のシンポジウムで「図書館は文庫本を貸し出さないでほしい」と主張されたことが話題になった。本が売れにくい時代、単行本が刊行数年で文庫化してようやく採算が取れるはずが、図書館で文庫本を借りられることでビジネスモデルが崩れてしまうという。

 作家の中には、刊行半年は図書館に置かないでほしい、と要望する方もいる。買わずに借りて読まれるばかりでは印税が入らない。すなわち生活が成り立たず、作家業が続けられなくなる恐れがある。

 図書館の貸出冊数の急増が書店の売り上げ減少に関係すると思われる向きもあるが、果たしてそうなのか。

 先日私が出向いた山梨県立図書館では、図書館と書店が連携を組む「やまなし読書活動促進事業」(やま読)という活動を行っていた。平成29年には図書館で借り、本屋で買うとポイントがもらえるスタンプラリーを行ったそうだ。館長の作家、阿刀田高さんの呼びかけで作家を招いた講演会やサイン会、ビブリオバトルや「贈りたい本大賞」など読者参加のイベントを仕掛け、少しずつ浸透しているという。

 図書館と書店は一見敵対関係に見えるが、本を守り、読者を育てていくという立場では同様だ。そして両者は本を読者に届ける、という意味でも非常に近い位置にいる。

 私自身、本はどれほど衰退しても全くなくなるものだとは思わない。ただし出版のビジネスモデルは変わっていくかもしれない。音楽CDが売れなくなり、ライブが大きな力を持つようになったように。これからは本を応援するもの同士が手を取り合って、次世代への文化のつなぎ方を模索していくことが課題となるだろう。

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【プロフィル】中江有里

 なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。