首相が安保の現実を語る時代 論説副委員長・榊原智

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参院本会議で答弁する安倍首相=1月26日午前

 安全保障をめぐって、安倍晋三首相が本当のことを語る場面が増えている。

 首相は1月26日の参院本会議で「政府には何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任がある」と述べた上で、「日米同盟のもとで、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠だ」と指摘した。

 核・ミサイル開発をやめない北朝鮮の「重大かつ差し迫った脅威」を踏まえた答弁だ。

 もちろん、唯一の戦争被爆国として、日本が核抑止の現実を踏まえつつ「核なき世界」を実現する努力を重ねる方針も併せて表明している。

 1月31日の参院予算委員会では、中国の原子力潜水艦が尖閣諸島周辺の接続水域を潜航した件を問われ、「領土、領海、領空を断固、守り抜く」とし、尖閣について「政権の決意を見誤るべきではない」と語った。

 尖閣への領土的野心を募らせ対日挑発を重ねる中国への明確な警告だが、同時に、南西防衛の責任を果たすという沖縄県民および国民への約束の確認、さらには同盟国米国に対する尖閣防衛の決意の披露でもある。

 2月14日の衆院予算委員会では、専守防衛のもとでは「相手からの第一撃を事実上甘受し、国土が戦場になりかねない」と述べ、日本が金科玉条としてきた防衛戦略の欠陥を指摘した。

 いずれも、もっともな発言である。国際常識を備えた専門家の間では分かっていた点ではあるが、歴代首相が正面から論ずることはなかった。一昔前なら、空想的平和主義勢力から総攻撃され、政権がぐらついてもおかしくなかったであろう。

 しかし、今はそこまで愚かなことは起きない。安全保障環境が厳しさを増した反映である。

 語るべき防衛上の問題はほかにもあるが、国政の最高責任者が勇気をもって国民に真実を伝え始めたのは喜ばしい。

 その上で必要なのは、安倍首相の指摘を政府・与党が重く受け止めて共有し、国民に丁寧に説明していくことだ。それが、現実的、建設的な安全保障論議と政策の展開につながる。