小泉純一郎元首相の初の回想録『決断のとき』を読んで 2月17日

産経抄
平成13年6月、自民党総裁の小泉純一郎首相(手前)と野中広務氏。小泉氏から「抵抗勢力」として標的にされた=自民党本部

 「拉致問題を解決し、横田めぐみさんをはじめ、全ての拉致被害者を返してもらいたい」。安倍晋三首相は9日、韓国・平昌で北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長に迫った。これに金氏が何と答えたかは、政府は「今後の交渉もあるから」(高官)として一切明かしていない。

 ▼16日に発売された小泉純一郎元首相の初の回想録『決断のとき』を、早速手に取った。「この本を書いている最中にも、(日本政府は)被害者が戻れるための努力は水面下で一生懸命やっていると思います」。小泉氏が記す通りだと信じたい。

 ▼北朝鮮をめぐる状況は、平成14年の小泉氏の初訪朝時と似通う部分がある。回想録は、当時をこう振り返っている。「アメリカがアフガニスタンで対テロ戦争を仕掛けた頃でもありました。北朝鮮はブッシュ大統領に『悪の枢軸』と名指しされたことに危機感を強めていた」。

 ▼トランプ米大統領は昨年4月、アサド政権軍の支配下にあるシリアの空軍基地に対して突然、巡航ミサイルによる攻撃を行った。そして北朝鮮をテロ支援国家に指定し、徹底的に金融や経済面で締め上げている。北は今、16年前と同様に苦境に陥っている。

 ▼安倍首相は14日には、トランプ氏と1時間16分にわたり電話で会談し、北朝鮮に最大限の圧力をかけ続けていく方針で一致した。追い詰められた北が、拉致・核・ミサイルの各問題で政策を転換し、対話を求めてくるよう歩調を合わせている。

 ▼トランプ氏は昨年11月の日米共同記者会見で、北朝鮮が被害者を返した場合について、こんなメッセージを発している。「それは多くの特別なことの始まりになる」。ピンチはチャンスという。北の危機を、うまく被害者帰国につなげてほしい。