今こそガンジーの命がけの非暴力を見直そう 1月30日

産経抄

 「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」。平昌五輪の女子スピードスケートの金メダル候補、小平奈緒選手はシーズン前、インド独立の父、マハトマ・ガンジーの言葉を引いて抱負を語った。

 ▼いささか旧聞に属するが、鳩山由紀夫元首相も平成22年の施政方針演説にガンジーの有名な言葉「七つの社会的大罪」を引用している。もっともその一つ「労働なき富」は、実母からの偽装献金問題を抱える鳩山氏にこそあてはまった。「あなただけには言われたくない」と失笑を買ったものだ。

 ▼今なお多くの日本人から尊敬されるガンジーは、70年前の今日、78年の生涯を終えた。インドが英国から独立を果たして半年後である。パキスタンとの分離に反対し、ヒンズーとイスラムの和解を訴え続けたガンジーは、狂信的なヒンズー教徒の凶弾に倒れた。

 ▼そのインドでは4年前、ヒンズー至上主義を掲げるモディ政権が誕生した。以来一部の市民が過激化して、イスラム教徒やキリスト教徒を襲撃する事件が相次いでいる。死刑になったガンジーの暗殺者をたたえる動きさえある。インドだけではない。宗教間、民族間の対立は世界中で激しくなるばかりである。

 ▼紛争を解決するために、ガンジーが使った唯一の“武器”が、「光栄ある死までの断食」である。「平和が訪れるまで、いつまでも続けるであろう」。ラジオを通じて民衆に呼びかける声は、やっと聞き取れるか細さだったという。各宗派、政党の指導者は和解に応じざるを得なかった。

 ▼「もし暴力に訴えたいのならまず私を倒せ、ここから動かせるのは私ではなく、私の死骸であろう」。ガンジーの「非暴力」は、常に命がけだった。今こそ見直されるべきだろう。