最強寒波、草津の噴火…情報社会の落とし穴 1月28日

産経抄
列島を覆う寒波の仕組みイメージ

 折りたたみ傘を持って出ようか出まいか。思案する朝が、近頃はなくなった。スマートフォンに向こう24時間の天気が示され、空模様を見るまでもない。何時にどのくらい降るかの予報は詳細かつ正確で、さして疑うこともなく鵜呑(うの)みにしている。

 ▼お天気博士の倉嶋厚さんが以前、「空に三つ廊下あり」と書いていた。降ろうか、照ろうか、曇ろうか。予報官が判断に迷う天気を指した冗句だという。今は死語かもしれない。現代の情報依存やデータ偏重を「これも時代」とうなずくべきか、「思考停止」と戒めるべきか難しいところではある。

 ▼列島を冷やした先週の最強寒波で、首都圏のターミナル駅は大いに混雑した。降雪のピークに備えて早めに仕事を切り上げた人々が、一斉に駅へと向かった結果である。同じ情報があまねく行き渡った社会の落とし穴といっていい。

 ▼かと思えば、噴火した草津白根山の膝元にある群馬県草津町では、火山の警戒地域でありながら避難計画の策定が進んでいない。火山のデータが少ないことが理由という。情報不足で身動きが取れないのも、時代を映した病だろう。

 ▼2004年アテネ五輪で野球日本代表が格下の豪州に敗れた際、「相手の情報が少なくて申し訳ない」とスコアラーが謝った。この一幕を評論家の豊田泰光さんは情報依存のツケと自著で叱っている。「ひもじくなったときに毒きのこか食えるきのこか見分けるたくましさ」が選手に欠けていたと。

 ▼不測の事態で左右を決めるよすがを、自身の嗅覚に求める。その覚悟はなるほど必要かもしれない。大雪の予報なら「出社しない」のも一つの自衛策だろう。手元の情報に頼りつつ、最後は自身で安危を見極める。要は五感の手入れから、である。