ムーミンの谷はフィンランドかスウェーデンか 1月17日

産経抄
ムーミンを取り上げたセンター試験地理Bの問題

 安倍晋三首相は、日本の首相として初めてバルト三国を訪れた。戦前この地には、「諜報の神様」と呼ばれた小野寺信(まこと)が陸軍武官として赴任している。1941年から敗戦までは、スウェーデンに駐在した。

 ▼小野寺はこの間、独ソ開戦からソ連の対日参戦まで、重要情報を日本に送り続けた。電報の暗号化を担当したのは、百合子夫人である。もっとも、大本営はことごとく握りつぶしていた。

 ▼百合子夫人は戦後、童話「ムーミン」シリーズの翻訳者として知られるようになった。原作はフィンランドの作家、トーベ・ヤンソンがスウェーデン語で書いた物語である。以上の経緯を知っている受験生なら、確かにとまどったかもしれない。

 ▼今年の大学入試センター試験の「地理B」のアニメをめぐる出題が、さらに波紋を広げている。「ムーミン」をフィンランド、「小さなバイキングビッケ」をノルウェーと組み合わせる。このセンター側の「正解」に、専門家が疑問を突きつけた。「ムーミン谷がフィンランドだとは断定できない」と。

 ▼「ビッケ」についても、原作者はスウェーデンの作家である。ビッケが拠点とする「フラーケ」もスウェーデンの地名という設定だ。もはや出題が妥当かどうか、北欧3カ国の人たちに判定してもらうしかないのではないか。

 ▼センター側に意見書を提出するのは、大阪大学大学院のスウェーデン語研究室である。大阪大といえば、昨年の一般入試の物理で出題ミスがあり、本来合格していた30人を不合格としていた事実が明らかになったばかり。今年のセンター試験中、監督をしていた教授が大いびきをかいて、訓告処分も受けていた。何やらこの大学は、入試をめぐるニュースの発信源になっている。