憲法改正と「安保法制の教訓」 首相と自民議員による国民への働きかけ必要 論説副委員長・榊原智

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自民党憲法改正推進本部の会合で挨拶する細田博之本部長(中央右)。同左は船田元氏=12月20日午後、東京・永田町の自民党本部(斎藤良雄撮影)

 新年に入って、安倍晋三首相(自民党総裁)が、憲法改正の旗を振っている。

 首相の意欲は疑うべくもない。昨年の憲法記念日には「自衛隊明記」を提起し、9条が再び、論議の真ん中に躍り出た。

 自民党憲法改正推進本部は首相の指示を受け、今年の通常国会での提出を目指し、党としての改正案をつくる作業を進めている。

 ただ、本当に憲法改正を実現したいなら、それだけでは足りないのではないか。

 必要なのは、首相自身と自民党国会議員による、国民への働きかけである。

 安全保障関連法の制定過程を思い出してほしい。

 集団的自衛権の限定行使を柱とする安保関連法がなければ、北朝鮮の核・ミサイル問題を前に、日本は立ち往生し、国民の生命は今以上に脅かされていただろう。

 それほど意義ある安保関連法だったが、多くの野党や左派的マスコミは猛烈に反対した。

 平和を守る法案であるのに「戦争法案」という正反対のレッテルを貼った。「徴兵制になる」というデマを飛ばす者もいた。少数派の学生団体「SEALDs(シールズ)」を若者代表のように扱い、報じ続けた。

 いきおい世論は影響された。

 ところが、政府・与党は当初、北朝鮮や中国の具体的な脅威とそれへの対応の必要性を国民に十分には説かず、数を恃(たの)んで法案を通そうとした。最終的には可決できたが、一時苦戦したのは当たり前だった。

 法律と違って憲法改正は国民投票で決まる。国民投票での可決が十分には見込めない状態を作ろうと、護憲野党や左派的マスコミは安保関連法のとき以上に、なりふり構わず動くと思われる。

 衆参の憲法審査会や政党内で議論するだけでは国民に改正への理解が広がるか心もとない。

 自民党は国民政党を自任しているはずだ。首相と所属議員が、有権者に協力を求める国民運動に乗り出したとき初めて、憲法改正は大きく前進するだろう。