孔子が説く失敗学のすすめ 30人合格ミスの阪大は「調査嫌い」の悪癖に染まったのか 1月8日

産経抄

 航空業界は昨年、大変な偉業を成し遂げた。オランダにある国際機関によると、全世界で発生した死者を伴う航空機事故は10件あり、44人が死亡している。ジェット旅客機の死亡事故はゼロだった。

 ▼年間のべ約4000万機の民間機が40億人近い乗客を運んでいることを考えると、驚くべき少ない数字である。ところが、やはり安全が何より求められる医療業界では、状況が大きく異なる。米国で2013年に発表された論文は、医療過誤による年間死亡者数を約40万人と算出していた。

 ▼英国のコラムニスト、マシュー・サイド氏は、失敗に対するアプローチの違いだと、説明する。航空機にはすべて「ブラックボックス」が装備されている。ひとたび事故が起これば回収されて、徹底的な分析が行われる。一方の医療業界の特徴は、「調査嫌い」である(『失敗の科学』)。

 ▼大阪大学もまた、同じような悪癖に染まっていたようだ。昨年2月に実施した一般入試の物理で出題ミスがあり、本来なら合格となる30人を不合格としていた。難関国立大学が犯した失敗に、入試本番を控えた受験生から驚きの声が上がる。

 ▼昨年の6月と8月に外部から問題の誤りを指摘されながら、きちんと調査をしなかった。昨年12月になってようやく出題ミスを認めた。30人の被った不利益を最小限に抑える機会をみすみす逃していた。失敗そのものより、失敗へのアプローチを間違えた、大学の対応の方がずっと罪が重い。

 ▼論語に「過(あやま)ちては則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」「過ちて改めざる、これを過ちと謂(い)う」とある。ただ孔子は、「過ってはならぬ」とは、言っていない。2500年も前から、失敗から学べと「失敗学のすすめ」を説いていたことになる。