拉致被害者を誰より案じられる両陛下 いかに大御心に添うか真摯に応える年

葛城奈海の直球&曲球
「新年祝賀の儀」を終え、退出される天皇、皇后両陛下と皇太子さま、秋篠宮さま=1日、宮殿・松の間(代表撮影)

 「伝統あるこの国を守ることができる幸せを感じています」。昨年末の会合で知人の発した言葉が琴線に触れた。同胞が40年も拉致され続けているのに“平和”を謳歌(おうか)する日本。「この国を守れていないふがいなさ」にばかり目が向いてしまう私には新鮮な視点であり、それでいて、なにか深いところに響いた。

 私たちが守りたいと思う「伝統あるこの国」とは何か。どんな時代にも変わらず日本の歴史を貫いてきたのは、国安かれ民安かれという天皇陛下の祈りに国民が包まれ続けてきたことだろう。権力をもって支配するのではなく国の様や民の心をお知りになろうと努める陛下にとって国民は「大御宝(みたから)」、つまり、わが子のような存在だ。

 歴代天皇は大地震など天変地異があれば、自身の「不徳の致すところ」とし、元旦の儀式として宮中で行う四方拝では「盗賊、毒、危難、害などあらゆる禍(わざわい)が国民に降りかからずわが身を通過しますように…」と祈られている。その恩は私たち国民一人一人に降り注いでいる。民は陛下と一体となり、大御心(みこころ)を体する国民たらんと務める。それが日本の国柄であろう。だからこそ「守ることに幸せを感じ」られるのではないか。

 5人の拉致被害者が帰国した平成14年、お誕生日に際し皇后陛下はこう述べられた。「小泉総理の北朝鮮訪問により、一連の拉致事件に関し、初めて真相の一部が報道され、驚きと悲しみとともに、無念さを覚えます。なぜ私たち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識続けることができなかったかとの思いを消すことができません。今回帰ることのできなかった人々の家族の気持ちは察するにあまりあり、そのひとしおのさびしさを思います」

 あれから15年が過ぎた。北朝鮮の地にいて、いまだ帰国を果たせない被害者を誰よりも案じ、一日千秋の思いで待ちわびる家族の思いにもっとも寄り添い続けてこられたのは、他ならぬ天皇、皇后両陛下なのではないか。

 いかに大御心に添うか、われわれ国民が真摯(しんし)に応える年にしたい。

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【プロフィル】かつらぎ・なみ

 やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、キャスター、俳優。昭和45年東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会広報部会長、林政審議会委員。著書(共著)に『国防女子が行く』(ビジネス社)。