歴史学ぶ入り口になる「人」、龍馬や松陰…数多い方がいい

中江有里の直球&曲球

 高校の歴史教科書から「坂本龍馬」の名前が消えるかも?というニュースが話題となった。

 高校歴史教科書の執筆者や編集協力者が携わる「高大連携歴史教育研究会」による案で、決定事項ではないが、他に「吉田松陰」「高杉晋作」「クレオパトラ」も除外候補に挙がっている。

 端的に理由を言うと「覚えなければならない単語や用語が多すぎる」からだそう。現在主要となっている世界史B、日本史Bの教科書にある用語はともに3400~3800語と、年々増え続けてきた。これでは受験生は用語を暗記するだけになってしまうおそれがある。研究会のウェブサイトを見ると、歴史系科目を「考える楽しみを味わえる科目」に転換するための試みで、歴史の暗記科目化を克服し、思考力育成型科目に転換するためであるという。

 学生時代、私は暗記が苦手で歴史は不得手だった。覚えねばならないことばかりで苦痛だった。

 やがて小説を通して歴史の面白さを知り、社会に出てから歴史を学ぶ重要性に気づいた。歴史は過去の記録というだけでなく、人間の心理や自然災害や外交など、今に役立つ情報の宝庫だ。現在は小説やドラマの影響もあって歴史上の人物に親しみを持つ人も多く、若者はゲームや漫画に登場する武将のファンになったりもする。さまざまな媒体を通して、歴史上の人物が身近になっていくのが面白い。

 歴史が人によって作られてきたことを踏まえれば、特定の人から歴史への興味を持つ人もいるだろう。坂本龍馬や吉田松陰、高杉晋作の周囲には明治日本の流れを決定づけた人々がいたことは確かである。事実、多くの作家が主流でない龍馬や松陰にインスパイア(感化・啓発)されて歴史小説をつづってきた。私自身その小説に刺激されて、歴史をもっと知りたいと思った一人である。

 詰め込み型、暗記型がよいとは思わないが、暗記問題ではなく、論述の問題を増やす形はどうだろうか。

 歴史を学ぶ入り口は、おそらく数多い方がいい。学び方は人の数だけあるのだから。

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【プロフィル】中江有里

 なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。