現実を見つめ将来の夢へ…石川遼の決断

清水満のスポーツ茶論
石川遼。来季の米ツアー出場権を逃した=アトランティックビーチCC(共同)

 師走…。日本列島を包んでいた寒気が一瞬、緩んだ初旬のある日…。男子ゴルフの石川遼が、ひとつの決断をした。

 「来年は国内ツアーを中心に戦いたい」

 2013年から5年間戦ってきた米ツアーからの撤退。当初、来年1月から開幕するウェブドットコムツアー(下部)に参戦して米ツアーへの復帰を目指すはずだった。石川が吐露した。

 「ゴルフに関してアメリカで、初めて周りがうらやましいと思った」

 15歳でアマチュアとしてツアー初優勝。プロ転向後も18歳で最年少賞金王(09年)に輝いた。最高峰である米ツアーへと夢を膨らませたが、圧倒的な飛距離と精度を誇る海外選手に嫉妬を感じた。そこで石川は「染まろうとした」。スイングを欧米流に変えたことで腰を痛め、本来持っている自らの良さまで失った。

 米ツアー通算145試合に出場、2位が2度、トップ10入りが11度。無念の撤退ともとれるが、日本に主戦場を置くというのは、むしろ賢明な選択だろう。

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 思考に変化があった。

 「最近は武道とか仏教にも興味がでてきた。自分は日本人の標準的な体形、それを誇りにしたい」

 海外に赴いたことで日本の精神を知る石川の姿があった。『武士道』の著者、新渡戸稲造の言葉がある。

 『いかに苦しいことがあっても、ヤケになるのは短慮の極みである。逆境にある人は常に、「もう少しだ」と言って進むといい。やがて必ず前途に光がさしてくる』

 秋口から日本ツアーに7試合参戦、自身ワーストの5試合連続予選落ち…。それでも、真っ暗になるまでひたすら練習場でクラブを振っている姿を見た。

 「言葉で表現するのは難しい。まだ足を踏み入れたことのない高い次元を目指して」のスイング作りへの挑戦。1カ月で2万球以上も打ち込んで体に染みこませた。自身今季最終戦となった11月のカシオワールドで2位タイと光が見えた。

 恒例だった12月の沖縄合宿をやめた。地元・埼玉で徹底的に打ち込んでスイングを固める。米国での失敗を経験してきたからこそ見える“今と未来”である。

 己を俯瞰(ふかん)し、目標を達成するまでは、わずかな落胆も見せない。そんな“サムライ精神”が宿ったのかもしれない。

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 世間でささやかれる松山英樹との比較論がある。

 いわく「松山は欧米人並みの体格、石川はそれに比べ排気量がない」がその“差”だと。そうだろうか。11年米ツアー賞金王に輝いたルーク・ドナルド(英国)は175センチ、75キロ。石川とほぼ同じ体形である。

 石川だって日本を主戦としていた09年には世界ランク29位になり、マスターズなど多くのメジャー大会にも出場。だからこそ松山もその実力を認める。

 「遼のゴルフのポテンシャル(潜在的な能力)は半端ないものがある。必ず帰ってくる」

 ところで、いま日本男子は斜陽傾向にある。今季のツアー最終日のテレビ平均視聴率は3・6%(18試合、関東地区、ビデオリサーチ調べ)ともはや放映不可の“危険水域”。

 「寂しいですね。僕が戻ることで少しは活性化になれば…。日本がしっかりしてこそ、海外も見える。そういうツアーにしたい。僕も5年後くらいには力をつけて、またアメリカへという気持ちは強いです」

 まだ26歳。再び輝く日はそう遠くない気がした。