二刀流の挑戦を楽しみたい 彼自身が夢の具現者だ 論説副委員長・別府育郎 

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大谷翔平

 大谷翔平投手が海を渡る。投げては165キロ、打っては本塁打量産の、漫画の主人公のごとき大リーグ挑戦である。素直に胸を躍らせて見守りたい。

 球界のOBに聞いてみたことがある。往年のエースは「だって誰も日本で165キロを投げた奴(やつ)はいないんだぜ」と話した。元六大学のスラッガーは「あれほど懐広くボールを呼び込んで強くたたける打者は見たことがない」と話した。

 だから専念してほしいと自らの分野に呼び込みたいのだが、一方で規格外の二刀流挑戦の成否を見届けたい気持ちもあるのだという。それはOBの願望というより、少年期に見た夢の続きでもあったのだろう。

 日本球界での二刀流は、道半ばにあった。昨季は10勝、22本塁打を両立させたが、今季は故障もあり、3勝、8本塁打に終わっていた。本格的な成就は、より厳しい本場の球界で目指すことになる。

 過去にも打てる投手はいた。無安打無得点を記録した試合で堀内恒夫は3打席連続本塁打を放ち、江夏豊は自らの延長サヨナラ本塁打で決着をつけた。400勝投手の金田正一は晩年、代打にも立ったが、いずれもあくまで本業は投手だった。

 通算65勝、1137安打の記録を残したのは、大洋、ヤクルトで監督も務めた関根潤三である。だがこれも投手から野手に転向しての成績である。

 同時期の両立を探すなら、100年前の1918年、当時レッドソックスのベーブ・ルースが残す13勝、11本塁打まで遡(さかのぼ)らなくてはならない。だから米国でも大谷の入団は大きなニュースとなっているのだろう。

 ルースは20年、トレードされたヤンキースで野手に専念し、54本塁打を放った。あのルースでさえ、両立で大成したわけではないのだ。

 大谷が17番をつけるエンゼルスの本拠地、カリフォルニア州アナハイムには夢の国、ディズニーランドがあるが、入団会見で彼は「ディズニーランドで遊んでいる時間はないです」と述べた。それはそうだろう。彼自身が夢の具現者である。