アフリカで命落とす動物たち

黒沢潤のスポーツ茶論

 東アフリカを1990年代、単身で旅した。文豪ヘミングウェーの小説でも有名な美しいキリマンジャロが眺められるサバンナに夜、テントを設置し、かがり火をつけて眠っていたとき、どこからともなく近づいてきたライオンの低音のうめきを枕元で聞き、肝を冷やしたことがある。無数のピンクのフラミンゴが集まる湖の近くで見たゾウを近くで撮影しようとした際には、興奮して怒り狂ったゾウに数十メートル追い掛けられ、恐ろしい思いもした。

 忘れ難い恐怖とはいえ、「聖地」の動物のナマの姿に触れ、限りなく感動したことを今も覚えている。

 こんな経験があるだけに、米国の魚類野生生物局が11月に下した「決定」には衝撃を受けた。決定とは、アフリカのジンバブエとザンビアで合法的に狩猟したゾウの象牙など「記念品」を米国に持ち込むのを解禁するというものだ。オバマ前政権時代の判断を覆す決定には批判が噴出し、さすがのトランプ大統領もツイッターで「判断保留」の考えを示すに至った。

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 野生生物の宝庫・アフリカでは、「(ハンターからの徴収金による)収益が野生生物保護に使われるため特定種に利益となる」との考えにもとづき、狩猟が合法化されている国が多い。

 こうした狩りは「スポーツハンティング」「ブラッド(血)スポーツ」などと欧米で称され、高額なカネを支払い狩猟する者も少なくない。しかし、絶命したキリンの長い首と平行に添い寝して撮影し、ネット上で公開する女性も現れ、非難が殺到。女性は「妊娠していようが、子供がいようが、毎年必ず(獲物を)仕留めてきたわ」とも発言し、物議を醸している。

 スポーツハンティングの中で特に悪名高いのが「トロフィー(記念品・戦利品)ハンティング」。倒した動物の皮や牙、剥製用の頭部などを収集するものだ。「キャンド(缶詰)ハンティング」というものもあり、狩猟用のライオンを幼獣期から繁殖させ、草原に放し、撃たせるという。

 欧米などからは500万円前後のツアーも存在し、富裕層が駆けつける。富豪トランプ氏の先妻の息子は5年前、切り取ったゾウの尻尾を掲げる姿を写真に収めるなど、大の狩猟ファンとして知られている。

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 「必要」のためでなく、「娯楽」のためのスポーツハンティング-。アフリカでは、人間がライオンの子を車で連れ去り、必死に追いかける母親のライオンを撃ち殺す事例も報告されている。憤りを覚える。

 トランプ米政権が「記念品」持ち込みについて今後、どんな動きを見せるのか不透明だが、米国が持ち込みを解禁すれば、合法的なスポーツハンティングに加え、密輸による象牙・皮などの取引が増えることも予想される。2014年には、象牙密輸に関わった中国人らが、アフリカで逮捕される事件も発覚している。

 スポーツハンティングを合法的に認めるアフリカの国々では、汚職が蔓延(まんえん)しているとの指摘は絶えず、「ハンター」からの徴収金が動物保護に100%充てられている保証もない。

 米国が一時、「記念品」持ち込みの解禁対象としたジンバブエでは、37年にもわたり長期独裁体制を敷き、国際社会から批判されたムガベ氏が大統領として君臨してきた。動物の生命と引き換えに、よこしまな汚職役人のポケットに徴収金が入っていたのなら、言語道断と言わざるを得ない。