『全員集合』の舞台装置は、間違いなくザ・ドリフターズとともに番組の主役だった

中江有里の直球&曲球

 子供の頃、夢中になったテレビ番組のひとつがTBS系「8時だョ!全員集合」。土曜の夜8時は必ずテレビの前にいた。まだ家庭用ビデオが普及する前だったから、オンタイムで見るのが当たり前だった時代だ。番組は基本的に生放送だったのでハプニングもそのまま放送された。スタートしてすぐ会場が停電になり、真っ暗なまま番組が進行した回があったのも印象深い。放送回数803回の公演は全国のホールなどで観客を前にしての公開放送。前半はコント、後半は人気歌手が登場して意外な素顔を見せるのも楽しかった。

 昭和45(1970)年「旧杉並公会堂」の公演資料をはじめとした数々の舞台装置の図面やスケッチ・写真などを紹介する東京・杉並区立郷土博物館分館企画展「8時だョ!全員集合」(12月10日まで)に足を運んだ。知恵と工夫が満載の展示だった。「ドリフの夢のマイホーム」の舞台装置は、家を覆いかぶせるような崖から大きな岩が踏みとどまっている。巨大な岩が落下して家をつぶそうとするハラハラ感がコントをスリリングに仕立てている。

 「ドリフの母ちゃん・カミナリ母ちゃん」は舞台端に高台を建てて、そこから自動車を舞台上の民家に落とす。車が水平に落ちるように繰り返された実験の写真が添えてあった。どのコントも綿密に計算された舞台装置が盛り上げる仕掛けだ。他にも屋台崩しや素早いセット転換が毎週生放送で、しかも会場の大きさによって舞台装置は毎回作り替えていたという。

 流れとしては土曜日に向けて台本が作られ、それを元に舞台装置製作、リハーサルを経て生本番を迎える。これを毎週繰り返すのは大変な労力だ。そして舞台の完成度がコントの出来に直結する。美術スタッフたちの超人的な仕事があったからこそ『全員集合』は今もバラエティーの金字塔として多くの人の記憶に残り続けているのだろう。

 舞台装置の貢献は一般的に気づかれにくいかもしれない。しかし『全員集合』の舞台装置は、間違いなくザ・ドリフターズとともに番組の主役だった。

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【プロフィル】中江有里

 なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。