殉職自衛官に思いを馳せる国民でありたい 

葛城奈海の直球&曲球
自衛隊殉職隊員追悼式で弔銃を見守る安倍晋三首相=28日午前10時52分、防衛省(代表撮影)

 台風22号が接近していた10月28日、東京都新宿区にある防衛省の一角、白と黄の花に彩られたメモリアルゾーンで、平成29年度自衛隊殉職隊員追悼式が行われた。

 本年度の殉職隊員は、陸上自衛官14柱、海上自衛官11柱の計25柱。自衛隊の前身である警察予備隊発足以来の殉職者は、1934柱に及ぶ。防衛相が主催し、最高指揮官である内閣総理大臣をはじめ遺族や来賓、約350人を迎えて毎秋挙行される追悼式では、拝礼、献花、儀仗(ぎじょう)隊による弔銃が行われ、新殉職隊員の名簿を刻んだ銅版が慰霊碑に納められる。

 安倍晋三首相は、「強い使命感と責任感を持って職務の遂行に全身全霊を捧(ささ)げた皆さまは、この国の誇り」と追悼の辞を捧げた。

 自衛隊機の事故が相次いでいることを受け、開式前、OBらが集う来賓控室に小野寺五典(いつのり)防衛相が見え、今年は新たに祭られる御霊(みたま)の数が多いこと、現在も海自・空自の隊員が行方不明のまま捜索中であることを述べた。私はここ10年ほど参列しているが、式典前の大臣のこうした行動は異例だ。簡潔な言葉にも、深い哀悼の意がにじんでいた。

 直前にも、8月末に青森沖で連絡を絶った海自哨戒ヘリが水深2600メートルの海底から引き揚げられ、2人の死亡が確認されたが、残る1人は不明。また10月中旬、浜松沖で消息を絶った空自救難ヘリの乗員4人もいまだ捜索中だ。

 自衛官がリスクを冒すのは、何も有事や敵を前にしたときばかりではない。急患輸送等(とう)で自衛隊機が飛ぶのは、気象条件等から他の選択肢がなく「最後の砦(とりで)」としてのことである。当然ながら、リスクは覚悟の上であろう。またそうした実任務に真摯(しんし)に備えようとするほどに、訓練のリスクも高まる。

 彼らにも家族がいる。追悼式にも母親の胸に抱かれた幼子や、まだあどけない子供たちの姿があった。遺族は、父親や夫、息子という大黒柱を失ってこの先の人生を歩む。殉職隊員のご冥福と、ご遺族が一日も早く悲しみから立ち直られることを祈るとともに、われわれの安穏とした日常がそんな隊員たちに支えられていることに思いを致せる国民でありたいと切に思う。

                  ◇

【プロフィル】葛城奈海

 かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、キャスター、俳優。昭和45年東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会広報部会長、林政審議会委員。著書(共著)に『国防女子が行く』(ビジネス社)。