「ロシア疑惑」日米の報道格差、日本国民にトランプ氏の良いイメージを抱かせない意図があるのか勘ぐる

ケント・ギルバート ニッポンの新常識
トランプ氏(左)とヒラリー・クリントン氏(AP)

 ドナルド・トランプ米大統領が5日に来日する。2年余り前、共和党予備選への出馬を表明したころの不動産王、トランプ氏は、下品な言葉で対立候補を揶揄(やゆ)することが得意な、泡沫(ほうまつ)候補に過ぎなかった。日米のメディアは彼を「暴言王」と呼んだ。(夕刊フジ)

 強烈な第一印象や先入観は、それを覆す情報がない限り更新されない。ところが、日本メディアの大半は、米国内に入り乱れる賛否両論のトランプ評のうち「アンチトランプ」しか報じない。トランプ氏に対する良いイメージを日本国民に抱かせない意図でもあるのかと勘繰りたくなる。

 例えば、日本で「ロシア疑惑」といえば、大統領選の際、トランプ陣営がロシアと通じて、対立候補だったヒラリー・クリントン元国務長官に不利な情報を拡散させた疑惑を意味する。トランプ陣営の選対にいたポール・マナフォート元本部長が起訴されたことで、この疑惑の捜査が佳境に入ったかのような印象を抱いている日本人は多いと思う。

 しかし、マナフォート氏の罪状は、ウクライナに関するロビー活動の違法性やマネーロンダリングである。大統領選の際にロシアと共謀して違法行為を働いた罪ではない。

 つまり、これは「森友学園」の籠池夫妻が補助金不正受給容疑で逮捕されたことを受けて、「彼らと繋がりのある安倍晋三首相も不正追及で窮地に立っている」と印象操作した手口とまったく同じなのだ。

 他方、トランプ氏の対立候補だったヒラリー氏について、日本メディアは真逆の扱いをする。

 米国のウラン鉱脈の5分の1を保有するウラン生産・販売大手「ウラニウム・ワン」の、ロシアへの売却という国防に関わる案件を承認したオバマ政権の国務長官はヒラリー氏だった。

 複数の米メディアによると、この企業の経営者などから、クリントン夫妻が運営する慈善団体「クリントン財団」に235万ドル(約2億6700万円)の寄付があった。ビル・クリントン元大統領はモスクワに招かれ、講演の謝礼として50万ドル(約5700万円)を受け取ったという。米下院諜報特別委員会が問題の追及を始めた。

 さらに、トランプ陣営の「ロシア疑惑」資料を入手するために、ワシントンの有力なロビー会社で、民主党に近い「ポデスタ・グループ」が関与していた事実も、米国では報じられている。

 米国の「ロシア疑惑」はトランプ陣営だけでなく、民主党やクリントン財団に対する疑惑と表裏一体なのだ。ワシントン支局などの駐在員が知らないはずはないのに、日本では報じられない。

 日本の「閉ざされた言語空間」を維持したい当事者は、いったい誰だろう。