日銀に向かう異次元金融緩和「出口論」の風圧 大切なのは確実な「脱デフレ」 論説副委員長・長谷川秀行

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 異次元金融緩和をいつまで続けるのか。最近、そうした「出口論」が関心を呼んでいる。

 日米欧の中央銀行はリーマン・ショック後、量的緩和やマイナス金利政策など危機対応型の金融政策を次々に実施した。

 だが、すでに米国はここから脱し、ユーロ圏も量的緩和の縮小に動きだした。英国は10年ぶりの利上げだ。いまだ大規模緩和を続ける日銀とは異なる。

 緩和長期化に伴うリスクを意識すれば、出口に目が向かうのも無理はない。ただ、政策自体を否定するような批判には日銀も苛立(いらだ)ちを隠せないようだ。

 先の記者会見で責任を問われた黒田東彦総裁は「景気がもっと悪くなり、物価がもっと下がった方がいいと考えるなら別だが、日銀は最も適切な金融緩和をしてきた」と反論した。

 はっきりしているのは、日本は直ちに出口戦略に着手できる状況にないことだ。企業は業績を伸ばし、雇用も改善した。それでも消費者物価上昇率は0・7%である。デフレ期のように物価が持続的に下落する状態ではないが、日銀が掲げる2%目標とはかけ離れたままだ。

 日本が米欧と決定的に違うのは、長きにわたるデフレを経験したことである。その間に根付いた消費者の節約志向や、企業の慎重な経営姿勢を払拭する難しさは米欧の比ではない。

 ここで前のめりに動けばデフレ時代に戻りかねない。日銀が表立って出口を論じただけで市場は政策変更を意識する。そう考えて、今は「時期尚早」とするのが日銀の立場である。

 日銀は2%達成時期を6回も先送りし、2019年度ごろとした。その道筋に確信を持てるかどうかが出口論を具体化する前提となろう。来年の春闘も大きなカギを握る。安倍晋三首相は3%の賃上げを求めたが、これが消費を喚起し、物価を押し上げる好循環につながるか。

 2%という数字自体には柔軟に対応してもよい。正常化に動いた米国でも、物価上昇率は1%台半ばから後半である。大切なのは脱デフレを確実にすることだ。それに資する現実的な政策が必要なのである。