人間の記憶は曖昧…安全・安心へドライブレコーダーに期待

中江有里の直球&曲球

 知人が運転中、自転車との接触事故を起こした。あたりは暗く、雨で視界が悪かったそうだ。すぐに警察を呼んだが、幸い自転車に乗っていた青年は、けがもなく、後は保険会社が対応することになった。

 念のため知人は設置していたドライブレコーダーの映像を事故後に確認した。知人は自動車に接触した衝撃で自転車の青年が道に転がったように記憶していたが、映像では自転車だけが転がっており、青年はその場に立ったまま着地していたそうだ。

 「記憶は当てにならない」と知人はつぶやいた。ついさっきのことなのに、事故で気が動転していたせいか、記憶違いしていたのだ。ドライブレコーダーの映像は事実を録画していてくれた。

 バスやタクシーでは当たり前になりつつあるドライブレコーダーだが、先月から改めて注目が集まっている。

 今年6月に、東名高速道路で妨害行為を繰り返し、被害車両を追い越し車線上で停車させ、追突事故を起こさせた事件。自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪で起訴された被告は、常習的に走行妨害を繰り返していたという。亡くなった被害者夫婦の長女、次女や警察による現場付近の走行車260台以上からの聞き取りによって事件は浮上した。

 もし、ドライブレコーダーを設置していたら、もっと早く真相がわかったかもしれない。

 そして、ドライブレコーダーは、こうした走行妨害の抑止にもなりえる。自分のよからぬ行動をカメラに収められたくないだろうから。

 冒頭の知人の経験からも言えるが、人間の記憶は曖昧だ。ドライブレコーダーに収められた記憶が身を助けてくれることもあるだろう。

 遠くない未来、すべての車両にドライブレコーダー設置が義務づけられる日もくるかもしれない。

 ドライブレコーダーは記録と事故の抑止だけでなく、設置している車両自身のことも記憶する。それぞれの車両が安全を心がけることで、安心して走行できる社会であってほしい。

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【プロフィル】中江有里

 なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。