ウオーキングのすすめ 論説委員・鹿間孝一

日曜に書く

 積年の不摂生がたたって糖尿病と診断されてしまった。以前からメタボ体形で、少し痩せなければと思っていたのだが、これを機に本気で生活改善に取り組もうと決意した。

 不規則だった食事を改め、間食、夜食は控える。そして運動でダイエットする。目標は年齢と同じ体重に。66キロである。

 ◆ダイエット作戦

 といっても、急にジョギングを始めても続きそうにないし、水泳はカナヅチだから無理だし、月イチ程度のゴルフでは運動にならない。で、歩くことにした。

 ノルディックウオーキングを始めた。クロスカントリースキーのように、両手にストックを持って歩くのである。

 両腕を使うから全身運動になり、ただ歩くより約20%多くエネルギーを消費するという。北国育ちで子供のころからスキーをやっていたので、すぐにコツをつかめた。

 休みの日には、近くの公園や街を1時間半ほど、6~7キロを歩く。ときには電車で知らない場所へ行き、10キロ以上も歩くことがある。とりわけ晴れた日の早朝がいい。

 けっこう流行しているようで、同じようにストックを手にした人とよく出会う。同年配が多く、どちらからともなく会釈してすれ違う。

 ノルディックウオーキングの同好会や、正しい歩き方を教えてくれるスクールもあるそうだ。なるほど上級者は歩くフォームやスピードが違う。

 こちらは散歩気分だから、疲れたら休み、遠出なら途中で切り上げて、電車やバスに乗って帰ってくることもある。

 通勤も徒歩にした。ストックは持たないが、最寄りの駅までの20分ほどと、会社の1駅手前で降りて約1キロを歩く。

 まだ4カ月足らずだが、体重は3~4キロ減って、とりあえず目指していた70キロを下回った。ダイエット作戦はまずは順調で、励みになる。

 ◆スニーカー通勤

 スポーツ庁の鈴木大地長官が今月初め、就任2年の記者会見で「FUN+WALK PROJECT」を提唱した。その名の通り「楽しく歩く」である。

 成人の週1回以上のスポーツ実施率は42・5%だが、20代から30代に限ると30%台前半に低下する。また、30代、40代の約8割が「運動不足を感じる」という調査結果がある。

 スポーツ庁は、週1回以上のスポーツ実施率を65%程度まで引き上げることを目標にしている。とくに運動不足を感じながら忙しくて時間の取れない働き盛りの世代に、スポーツに親しんでもらう環境整備が必要である。国民の健康増進は、医療費の抑制にもつながる。

 そこで「スニーカー通勤」や「歩きやすい服装」を推奨して歩く機会を増やし、1日にプラス1000歩(約10分)を目標にしてもらおうというのだ。ちなみに1日の平均歩数は男性が7194歩、女性が6227歩という。

 会見した鈴木長官もスーツにスニーカー姿だった。わが意を得たり、である。それにスニーカー通勤は、映画で見たニューヨーカーのようで、さっそうとして格好いいではないか。

 ◆歩けば効用あり

 作家で評論家の海野弘さんは「足が未来をつくる-〈視覚の帝国〉から〈足の文化〉へ」(洋泉社新書y)で、歩くことの文化的意味を説いている。

 テレビによって世界の果てまでを同時的に見ることができ、インターネットであらゆる情報が手に入る。現代はあまりに視覚中心の社会になってしまった。さらに交通手段の発達もあって人間は歩かなくなった。

 「見」という字を分解すると、目に足がついている。目だけでは見ているとはいえない。

 「目の文化は、空間的、間接的、表層的であり、足の文化は、時間的、直接的、深層的である」。だから、「歩くことで、新しい考えを生み出すのであり、人間にとって歩くことは、目的なのである」。

 確かに、歩くことで新しい発見がある。さらにぼんやり浮かんだアイデアが、歩いているうちに形になり、考えがまとまることがある。

 もう一つ、効用がある。

 歩いていると腸の活動が活発になるのか、トイレに行きたくなる。知らないうちに便秘が治ってしまった。

 駆け出しのころ、先輩から「取材は足でしろ」と教えられたが、けっこう深い意味があったのかもしれない。(しかま こういち)