(1)核・ミサイル 産経「日本の主体的役割訴え」 朝日「忍耐伴う外交努力を」 

社説検証
国連総会の一般討論演説でトランプ米大統領は拉致問題にも言及し、北朝鮮を厳しく非難した=今年9月19日(AP)

 北朝鮮情勢が緊迫化している。日本の少子高齢化は危機的状況にある。どう乗り越えるか。「国難」であり、衆院選の大きな争点だ。新聞週間を機会に、全国紙5紙の社説(産経は主張)を比べた。(論説委員室)=少子高齢化は河合雅司、北朝鮮情勢は沢辺隆雄が担当

 核・ミサイルの挑発を繰り返す北朝鮮の脅威は急速に高まっている。暴挙を各紙が厳しく批判するのは共通するが、何をすべきかをめぐって論調に違いがある。

 それが目立ったのは今年9月、国連総会のトランプ米大統領の演説を受けた社説だ。トランプ氏は自国や同盟国を守るためには相手を「完全に破壊」するという強力な警告を発した。

 産経は「北朝鮮の核・ミサイル戦力を世界全体への脅威と位置づけ、世界をリードする意思を表明した」と率直に評価し、「日本も決意を共有し、主体的に打つべき手を実行に移さなければならない」と訴えた。

 読売も「日本や韓国を防衛する明確な意思と、北朝鮮が敵対行為をやめるまで圧力を強める方針を表明したのは妥当である」と評価した。日経は「軍事衝突という最悪の結果を避けるには、圧力を強めて危機を封じ込めるしか道はない」とし、石油の全面禁輸を含めたさらに厳しい制裁の検討にも言及した。

 これに対し朝日は、安倍晋三首相の演説と併せて取り上げ、「危機をあおることなく、事態を改善する外交力こそ問われているのに、日米首脳の言動は冷静さを欠いている」と批判した。「国際社会が求めるのは忍耐を伴う外交努力なのだ」という。毎日もトランプ演説に「穏やかじゃない。乱暴だ。そう思った人も多いだろう」とし、「中露の北朝鮮説得も含めて、政治の役割はむしろこれからだ」とくぎを刺した。

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 ミサイル防衛の強化や敵基地攻撃能力の保有についても論調が分かれた。

 産経は、その必要性を機会を捉え訴えた。今年8月、北朝鮮が北海道上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射したのを受け、「日本が取ってきた『専守防衛』という抑制的な立場では十分な対応はとれない」「独裁者に日本攻撃をためらわせる反撃力を持っていないからだ。懲罰的・報復的抑止力を保有することを考えてほしい」と求めた。読売もミサイル防衛強化を求めたほか、「敵基地攻撃能力の保有も、検討すべきである」とした。

 これに対し朝日、毎日はミサイル防衛強化などに懐疑的だ。防衛予算にからみ朝日は「過度の軍拡競争はかえって地域の安定を乱しかねない」(9月1日付)、毎日も「軍拡競争につながるおそれすらある」(9月6日付)などとした。

 敵基地攻撃能力についても朝毎は専守防衛を堅持し、保有を否定する立場だ。

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 北朝鮮が初めて核実験を強行したのは2006(平成18)年だ。各紙がこの暴挙を批判したが、日本の核保有について論議が起きた。当時の中川昭一自民党政調会長が「議論はあっていい」、麻生太郎外相も国会で「一つの考え方として議論しておくのも大事だ」などとした。

 朝日は中川発言を「政策責任者の立場にある人の発言としてはあまりに軽率」、麻生発言を「なんとも危うく、不見識な発言」などと批判した。

 産経はこのような批判に対し「核に関する論議をあまりにタブー視しすぎているためではないか。思考停止を続けていては、いつまでも普通の国にはなれない」と指摘した。読売も「北朝鮮の核の深刻な脅威の前に、日本の平和と安全をどう守るか。様々な視点に立った議論があっていいはずだ」と擁護した。

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 今年、石破茂・自民党元幹事長の発言に対しても、朝日は「日本の非核外交の足元を掘り崩すような発言をする石破氏の見識を疑う」(9月8日付)と批判した。毎日も「究極的に核兵器をなくそうとする日本の国家意思の大義を弱めかねないと危惧する」(9月9日付)という。

 石破氏は北朝鮮の核・ミサイルへの抑止力として日本国内に米国の核兵器を配備する是非を議論すべきだという、当たり前の問題提起をした。産経、読売は、将来を見据え、さまざまな視点に立った論議を支持した。

 ★北朝鮮の列島越えミサイル(今年8月)=いずれも30日付

 【産経】首相は積極防衛に転換を

 【朝日】日米韓の結束強化を

 【毎日】日本主導で5カ国協議を

 【読売】日本通過は許されない暴挙だ/国際社会は新たな脅威に警戒を

 【日経】危険極まる北の挑発に強力な制裁圧力を

 ★6回目の核実験(今年9月)=いずれも4日付

 【産経】最悪の暴挙を許さない/あらゆる手立てで国民守れ

 【朝日】国際枠組みの対処急げ

 【毎日】全力で危機を封じ込めよ

 【読売】脅威を具現化する金正恩政権/国際包囲網で解決の糸口を探れ

 【日経】核実験強行の北朝鮮に石油禁輸制裁科せ

 ★トランプ米大統領の国連演説(今年)

 【産経】大統領言及の機を逃すな(9/21)

     北の核阻止へ決意みせた(同)

 【朝日】圧力は手段にすぎない(9/23)

 【毎日】北朝鮮は考え直すときだ(9/21)

 【読売】北朝鮮の非道を世界に訴えた(9/21)

 【日経】北朝鮮の封じ込めへ日米韓は全力尽くせ(9/23)

 ★核保有論議(平成18年)

 【産経】もう思考停止はやめよう(10/20)

 【朝日】前のめり過ぎないか(10/17)

     外相の答弁は不適切だ(10/20)

     日本を危うくするだけだ(11/11)

 【毎日】「非核」の看板に傷がつく(11/11)

 【読売】議論すら封じるのはおかしい(11/8)

 【日経】不見識な中川氏の核発言(10/17)

     収束の時期きた核保有論議(11/9)