失われた神田の川を歩けば

ん!?

 街を歩くと、川とか堀とか、地名だけは残るが、水辺の雰囲気を失ってしまった場所に出くわす。あるいは、碁盤目状の街区を斜めに横切る道、不自然に細長い公園、蛇行する路地など名前はなくても「きっとここは…」と、かつての水路を想像できるような地形もある。

 過去の風景をあれこれ想像するのは散歩中の楽しみだが、消滅した河川に学術的にアプローチして都市論、景観論としてまとめた好著が『東京暗渠(あんきょ)学』本田創著(洋泉社)だ。とにかく面白いのだが、眺めていると、やっぱり歩きたくなる。

 で、会社に近い竜閑(りゅうかん)川(神田八丁堀)という水路跡をたどってみた。埋められて1キロあまりの路地として残る。歩き出したのは西端の「竜閑橋」という交差点。名前を残して橋は廃止され、小さな緑地に橋桁の一部が保存されていた。

 路地は裏通りの風情。街の騒がしさが少し遠ざかる。車も通らない。両側にビルが迫って、都会の峡谷といった感じ。途中で気づいたが、道の片側は中央区、反対側は千代田区。区境なのだ。以前の街は水路で区切られていたらしい。

 鉄道や高速の高架をくぐり、川の流れを想像しながら、のんびり歩く。道は唐突に、小さな公園に突き当たって途切れた。見回すと、左右両側に続く路地を発見。これも別の水路跡。かつては隅田川や神田川ともつながっていたらしい。

 公園には橋をかたどったモニュメントも。案内板を探しているうちに「あれ!?」。この公園って、入り口によって名前が変わる。一方には「千代田区龍閑児童公園」、反対側には「中央区龍閑児童遊園」。区境だけに半分ずつ管理? しかし、公園と遊園って何が違う?

 失われた川を歩く。くせになりそう。(篠原知存)