じっくり考えたい秋 衆院選、教育の質向上に必要な改革は何か 論説副委員長・沢辺隆雄

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 薩摩藩出身で明治期に初代文部大臣を務めた森有礼(ありのり)の「自警」は、学問を司(つかさど)る文部行政の責任の重さを自ら戒めた文だ。脇目もふらず文部省の職務に精進し、最後は職に死する覚悟を求める厳しいものだ。教育関係者などに引用されることも多く、現文部科学省の大臣室などにも掲げられている。

 そうした文教施策の重要性に鑑み、いま、本当に教育の質向上のため考え抜かれたのか、気になることが多い。

 例えば東京23区内の私立大・短大の定員増を原則認めないとする政策だ。文科省が平成30、31年度の大学設置について新基準を告示した。

 東京一極集中を是正するなどとし、閣議決定を受けたものだが、学問の自由や大学の競争をかえって阻害するのではないかなど評判が悪い。都心に大学を増やさないからといって、地方が活性化するのかという根本的な疑問もある。

 国民への意見募集(パブリックコメント)では少子化の中で「定員抑制の方向性に賛成」「大学と学生の質の保証にもつながる」という賛成意見はあった。それは東京23区内だけでなく、大学政策全体に求められることだが、大学が多すぎるとの声に対し抜本策はみえない。

 「東京は先進的研究が集積し、地方の学生、留学生ら多くの人材が交流する。その場を弱体化させる」「社会人の学び直しのニーズに逆行する」など反対意見はもっともだ。それに対する答えは不十分で、32年度以降のことは政府の有識者会議の議論を受け再度検討するというから場当たり的にみえる。

 文科省だけの話ではなく、幼児教育無償化にしても目的が不明確だ。その前に待機児童をどうにかしてくれとの声は当然でる。幼児期の教育への投資効果は高いといわれるが、ピアノなど、お稽古事まで国は面倒を見きれまい。親がありったけの愛情をそそぐ大切さも忘れてはならない。

 総選挙である。ノーベル賞週間でもある。教育の質向上に必要な改革は何か、何が優先されるべきか。じっくり考えたい。