言葉は常に変化する 「耳触り」も公認!?

ん!?

 筆箱、つり革、歯磨き粉、げた箱、グラビア。以上の言葉に共通することは何でしょう?

 先日の文化面で、国語辞典や漢和辞典などを6千冊も所蔵している校正者で辞書研究家の境田稔信さんを紹介した。まさに言葉のプロ。自宅マンションにお邪魔して、いくつも並ぶ本棚の隙間で立ち話。辞書について、言葉について、面白い話がいくらでも出てくる。もったいないので少しだけご紹介。

 いろいろ聞いて納得できたのは「言葉は常に変化する」ということ。だから辞書だって改訂する。しなきゃいけない。

 たとえば「耳ざわりが良い」は誤用だと思い込んでいたが、最近はそうとも言い切れない。「耳障り」という漢字だと「聞いて不快に感じる」という意味だから、良いのは変。でも「障り」ではなくて「触り」という意味で使っている例が、じつは江戸時代からあるそうだ。大正時代の文学作品にも「耳触り」が登場するという。平成になってからは、「耳触り」を「聞いたときの感じ」と説明する辞書も出てきた。つまり公認されたということだろう。

 新しい言葉も出てくる。逆に死語もできる。なかには、実体と合わなくなっても、柔軟に生きのびる言葉もある。

 たとえば、書籍の余白部分に入る書名や見出しを「柱」と呼ぶ。柱のくせに横倒しで、どちらかというと梁(はり)や鴨居(かもい)と呼んだほうが良さそうだ。「じつは和本では縦だったんです。その名残ですね」。洋装本が主になってからも呼び方だけは変わらなかったそうだ。最初の問い、答えがわかったでしょうか。

 筆を入れなくても筆箱、ビニール製でもつり革、ペースト状なのに歯磨き粉、靴を入れるげた箱、オフセット印刷なのにグラビア。ほかにもあるかも。(篠原知存)