対中経済外交でG7の結束を 論説副委員長・長谷川秀行

風を読む

 国連総会でのトランプ米大統領の演説で目を引いたのは、北朝鮮問題に対処するため米国が世界を主導する強固な意思だった。それは米国の国益にも資する。米国が外交分野で国際社会の結束を促すのは当然だ。

 では、トランプ氏の経済・通商問題での対応はどうか。貿易相手を敵視する過激な発言とは裏腹に、極端な保護主義政策を実際に発動しているわけではない。それでも国際社会との協調姿勢は一向に見えぬままだ。

 米国が問題視する懸案には日欧と認識を共有できるものもある。それを顧みず独善的に動くから批判を受ける。そこに気づかぬ限り理解は得られまい。

 注目したいのは、最近、米国と欧州連合(EU)がそれぞれ発表した企業買収規制だ。米国は中国系ファンドによる米半導体メーカーの買収案件を禁じる命令を出した。安全保障に配慮して技術流出を阻むためだ。

 一方のEUは域外企業による欧州企業の買収審査を強化すると発表した。ハイテクやインフラ、宇宙など戦略分野の企業や技術を守るのが目的だ。安保関連の技術流出をめぐっては、日本でも10月から防止策を強化する改正外為法が施行される。

 日米欧の措置に通底するのは、経済と軍事が結びつく中国の国家戦略への警戒だ。中国企業が先進国企業の買収に動く例が増えている背景に、民間技術の軍事利用を目指す国家の意思が透けてみえるからである。

 ならばこれを先進7カ国(G7)で取り上げてはどうか。

 5月のG7サミットでは、撤廃すべき貿易慣行として「強制的な技術移転」を共同声明に例示した。対中進出する外資系企業に対し中国当局が行っているとされる問題を指すのだろう。

 これに加えて中国による企業買収でも危機感を共有する。議論を積み重ねてG7の結束を強めれば、中国の覇権主義的傾向を牽制(けんせい)する圧力となろう。

 中国は今回の米国の措置を保護主義だと批判している。米国が有効に反論するためにも日欧との協調には意味がある。米国が孤立化を深めぬよう働きかけるのは日本の役割でもある。