スポーツの活性化、社会との関わりに踏み込む

蔭山実のスポーツ茶論

 「まるで優勝決定戦のようだった。見に行ければ、よかった」。知人からそんな連絡をもらったのは、9日に開幕した東京六大学野球秋季リーグ戦でのこと。第1週でいきなり対戦することになった早稲田大と明治大の一戦の翌日だった。

 1回戦は明治大が完封勝利、2回戦は早稲田大打線が爆発して大勝。勝負を決する3回戦は息詰まる投手戦で1-1で延長戦に突入した。明治がリードを奪うと早稲田大が追いつく展開で、十回に1点を取り合って2-2。十二回に先攻の明治大が3-2と勝ち越すと、早稲田大の粘りもここまで。決着がついた。

 終わってみると、明治大の先発、斉藤大将投手(4年、桐蔭学園)は1回戦の完封から中1日で十一回途中まで154球を投じ、早稲田大は前日先発で107球を投げた大竹耕太郎投手(4年、済々黌)が連投で六回から60球を投げた。

 両投手とも崩れることなく投げきり、延長に入っても一塁と本塁の間での併殺や本塁上のクロスプレーと互いに死力を尽くした。惜しいのは、この大熱戦を神宮球場で観戦したのが3千人程度だったことだ。

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 リーグ戦は先に2勝したチームが勝ち点1を獲得する。試合が当初から予定されている土曜日と日曜日の集客対策では、開幕の9、10の両日、六大学がそれぞれ神宮球場の正面前に模擬店を出し、学園祭で人気のメニューを販売、それを手に観戦する企画を行った。東京六大学野球活性化の一環として学生が考えた。

 ただ、実力伯仲の好カードほど1勝1敗で3回戦に入ることが多い。それだけ熱戦になるのだが、問題はこれが月曜日の試合になること。それをいかに多くの人に見てもらうか。これを解決するには運営とともにライフスタイルの変革が必要かもしれない。

 活性化の関連でいうと、秋季はもう一つ楽しみがある。夏の練習を乗り越えて選手がどれだけ成長し、リーグ戦で活躍するかだ。若手育成の場として注目されるのが新潟県三条市で始まった「大学野球サマーリーグ」。今年で3回目を迎え、その成果は野球の枠も超えて重要になっている。

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 「ここで鍛えて、今後の活躍に生かしてほしい。学生野球の集大成として、野球にしっかりと取り組み、向き合ってもらうことで、卒業後の人生の宝になる」

 8月10~12日に行われた今年のサマーリーグは三条市を拠点に、隣接する長岡市と見附市にも球場を拡大された。開会式での三条市の代表者の言葉は、選手を支える地域にも目を向けると、スポーツを通じた「ひとづくり」の潮流ができつつあることを感じさせる。

 参加したのは、立教大▽慶応大▽法政大▽明治大▽東洋大▽筑波大-の6チームで、1試合ずつの総当たり戦を行った。昨夏の甲子園で注目された1年生も登場するとあって、多くのファンが球場を訪れた。

 一方で、運営の学生スタッフは実地で経験を積み、選手は交流試合を通じて高校生の模範となる。地元では地域の活性化につなげる意識が強まる。こうした効果を含めて「三条モデル」という言葉もでき、それに着目した関西の関係者が同様の取り組みの実現に向けて視察に訪れていた。

 いつでも多くのファンが野球場に足を運ぶ時代を築くことができるか。それを考えることも、こうしたスポーツと社会の関わりに踏み込んだ活性化策を見いだすことにあるように思う。