「日本のバトントワリングが世界のトップクラスって、知っていますか」

津田俊樹のスポーツ茶論

 海外から続々と朗報が届く夏だった。陸上、レスリング、柔道、バドミントン、新体操などの世界選手権で、日本勢は2020年東京五輪に弾みをつける活躍ぶりをみせた。

 男女マラソン、男子柔道100キロ超級の不振を含め、期待と課題が報道されるなか、競技団体関係者から虚を突かれる質問を受けた。「日本のバトントワリングが世界のトップクラスって、知っていますか」

 まったくの初耳というか、40年近くスポーツ取材に携わってきたが、未知の領域である。

 世界バトントワーリング連合(WBTF)は28カ国で構成される。ホームページにアクセスすると、この8月、クロアチアで行われたインターナショナルカップの成績がアップされていた。19カ国、約千人が参加した大会は29種目が行われ、日本は金25、銀24、銅23個を獲得している。まさに、圧勝ではないか。

 選手団長を務めた日本バトン協会の杉浦紀子理事長は「本当に誇らしい日々でした」と語ったあと、驚きの言葉を口にした。

 「われわれには大きな夢があります。それはオリンピック競技種目として採用されることです」

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 バトントワリングとは、音楽に合わせながら、バトンを頭上や空中に投げ、華麗でテクニカルなボディーワークを競うスポーツである。

 回転させながら空中に投げ上げるエーリアル、手を使わずに体の一部分を転がすロール、両手で描く円の範囲内で両手を使い回転させるコンタクト・マテリアルの3要素に分かれる。

 選手の身長によって違うものの、バトンの長さは約70センチ、重さ270グラム前後が標準といわれる。女性のスポーツという先入観を持ってしまうが、男子、男女混合もある。

 国内の競技人口は約3万人。バトン協会は乳がんの早期検診・治療を呼びかける「ピンクリボン運動」をサポートするなど社会貢献に努めているものの、さらなる普及、PR強化が求められる。

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 国際オリンピック委員会(IOC)は五輪運動の将来像「アジェンダ2020」のなかで、開催都市が提案する競技を採用することを打ち出した。女子選手の参加増を重視して、男女比率が半々になるよう、強く促している。

 24年夏季五輪開催地をパリ、28年をロサンゼルスとすることで合意した。

 バトントワリングは躍動感、エンターテインメント性にあふれ、テレビや動画にも映える。現在のWBTF会長は米国人のサンディ・ウィマー氏、発祥の国で行われる28年大会が絶好のチャンスとなる。

 「クロアチアの大会前、各国の方々に『オリンピックを目指しましょう』と呼びかけて賛同をもらいました」(杉浦理事長)

 流れに乗り、行動に出るときである。五輪の実施競技種目は大会の3年前までに決まるだけに、残された時間は長いようで、短い。

 WBTF、米国オリンピック委員会、五輪組織委員会などと連携を深め、情報収集、人脈づくりが肝要となる。日本バトン協会の河野太郎会長(外務大臣就任のため休職中)は「いつの日かオリンピックの重要なスポーツに」というメッセージをおくる。

 夢に向かって高々と舞い上がるバトン。次代を担う若者のために、熱き思いを伝える戦いが始まろうとしている。