高校野球・中村、ゴルフ・松山…人を魅了するスポーツの魔力

清水満のスポーツ茶論
13日、全米プロ選手権の最終日ラウンド、コースを回りながら汗を拭う松山英樹。通算5アンダーで5位に終わった=クウェイルホロー・クラブ(ゲッティ=共同)

 その昔、CFでこんなキャッチコピーがあった。

 “○○を入れない、コーヒーなんて…”

 夏の甲子園大会、“怪物”清宮幸太郎(早実)の不在に、「ショボい大会になるかも…」。一瞬、そんな思いが頭をよぎったが、ふたを開けたら、とっておきの“平成伝説エキス”が入っていた。

 広陵・中村奨成が6本塁打。1985年、PL学園・清原和博が達成した1大会個人最多本塁打記録の5本を、32年ぶりに更新した。決勝戦で花咲徳栄(埼玉)に敗れ、頂点には立てなかったが、短期間で“清宮並み”になった。

 「悔しさを糧に、プロの舞台に立って晴らしたい」

 打てる捕手は、プロの世界でものどから手が出るほど欲しい逸材。イバラもあるだろうが、平成の新怪物の夢はこれからである。

 “まさか…エキス”には切なさを感じた。春夏連覇を狙った大阪桐蔭は甲子園の魔物にとりつかれた!? ゲームセットと思われた瞬間、一塁手がベースを踏み損ねて逆転負け。一塁手は泣き崩れた。

 それでも全48試合、それぞれが限界に挑戦して戦っていた。勝者は歓喜し、敗者は涙する。非情な世界であるが、たとえ敗れても次への糧とする姿が美しく見えた。そう、悔しさや失敗は、次への大きなステップになるのだ。

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 こんな言葉がある。

 『失敗することは耐えられるが、挑戦しないでいることは耐えられないんだ』

 マイケル・ジョーダンである。米プロバスケットボールの“神様”。シカゴ・ブルズ時代、15年間の選手生活で10度の得点王。ブルズを6度の優勝に導き、6度のファイナルMVPを獲得した男はこうも言った。

 『成功を学ぶためには、まず失敗を学ばなければならない。人生で何度も失敗してきたからこそ、私は成功した』

 アスリートが手にした栄光。ともすれば、そこだけがクローズアップされがちだが、たどり着いた者は多くの挫折を口にする。

 大リーグで17年目を迎えた今も、次々と記録を塗り替えるイチロー(マーリンズ)の言葉もある。

 『“できなくてもしようがない”は、終わってから思うことであって、途中にそれを思ったら、絶対に達成できません』

 壁を乗り越えて最高のパフォーマンスをする。人々の夢をかなえる代理者かのように。そんな姿に人々は憧れ、勇気づけられ、歓喜する。これこそ“スポーツの魔力”である。

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 そういえば…。男子ゴルフの最高峰、米ツアーの舞台に立つ松山英樹も悔しさを糧にして、壁を乗り越えようとしている。

 8月半ばの全米プロ選手権では、最終日、一時首位に立ちながら自滅して5位。日本人初のメジャー制覇を逃した。「悔しい。もっと気持ちの部分で成長しないといけない」。そこで流した涙は力になったはずだ。

 最終章でのリベンジ。先週の「ノーザントラスト」(米ニューヨーク州)から年間王者を決めるプレーオフシリーズ(全4戦)が始まった。最終戦は「ツアー選手権」(9月21日開幕、米ジョージア州)である。

 「すべては年間王者になることに集中したい」

 レギュラーシーズンの獲得賞金、王者を決める積算ポイントも堂々のトップ。技術的には問題ない。『MATSUYAMA』が“スポーツの魔力”を見せてくれることを祈りたい。