北方領土 露の特区指定は許されぬ

主張

 日本固有の領土である北方領土で、ロシアが好き勝手な振る舞いをしている。それを目の当たりにしながら、政府は穏便にすませようとする。何をしているのか。

 ロシアが北方領土の色丹島を経済特区に指定し、最初の事業として水産加工工場や冷凍施設の建設を進めるという。

 ガルシカ極東発展相は、「外国人投資家もロシア人と同じ条件で特区を利用できる」と説明する。日本や第三国の企業の進出を欲しているのだろうが、日本の主権などまったく無視している。

 日露協力の前提が失われたと、安倍晋三政権は重大な懸念を伝えるべきである。共同経済活動の協議の打ち切りも辞さない姿勢で抗議しなければ、プーチン政権に翻弄されるだけである。

 著しく不透明なのは、特区指定に対する日本の政府の態度である。大使館ルートでロシア政府に懸念を伝えたことが報じられているが、公式発表はない。

 菅義偉官房長官は会見で「ロシアの動向を注視する。情報収集と分析を進め、適切に対応したい」と述べるにとどまった。

 抗議の意思を示してしまうと、せっかくの共同経済活動が宙に浮く。そう懸念でもしているのだろうか。宙に浮くどころか、前提が破綻している現実に目を向けるべきだろう。

 安倍首相は9月上旬に、ウラジオストクでプーチン大統領と会談する予定だ。親密な関係なら、特区は受け入れられないと率直に申し入れるべきである。

 そもそも、北方領土を軍で占拠し、経済活動を行う権利などロシアにはない。必要なのは、日本から奪った島を返還することだ。

 両政府が検討を進めている北方領土における共同経済活動について、日本は双方の法的立場を害さない「特別な制度」の下で実現すると主張してきた。

 今回の特区は、新たにロシアの国内法を適用しようとするもので、日本の立場と相いれない。プーチン政権は日露首脳会談前に特区指定をぶつけ、経済的利益を引き出す狙いがあるのだろうか。

 領土返還に関する交渉が進まないなか、共同経済活動の構想が浮上した。あたかもこれを進展のように装い続ければ、ロシア側は見透かしたように揺さぶりを仕掛けてくる。それでは、外交交渉への国民の支持も得られまい。