五輪テロ、米スター軍団の備え 選手村使わず豪華客船貸し切り

津田俊樹のスポーツ茶論

 安心、安全は2020年東京五輪・パラリンピックの最重要テーマの一つである。警備計画では警察、消防、警備会社、民間ボランティアなど合わせて約5万人が携わるという。アリの這(は)い出るスキもない体制を敷き、万が一に備える。

 それでも、自らは自らで守るとビッグマネーを投資するのが、バスケットボール米国代表チームである。

 8月のリオデジャネイロ五輪では、男女とも選手村に入らず、豪華客船「シルバー・クラウド号(1万6800トン、乗客296人収容)」を貸し切り、桟橋を制限して出入りを厳しくチェック、不審人物を寄せ付けなかった。

 通常なら、世界中のセレブを乗せて七つの海をクルージングする船には、プール、カジノ、図書館、アスレチックジムなどがある。選手、コーチのほか医療スタッフ、コック、家族や友人、約100人以上が乗り込み、金メダルを獲得した。ニューヨーク・タイムズ紙は1部屋1週間で1万3千ドル(約130万円)と伝えたが、チャーター費用の総額は不明という。

 同船の日本代理店は「確かに私どもの船です。ロンドン五輪でも、どちらの方々とは申し上げられませんが、利用していただきました」と話す。オリンピック・ファミリー御用達なのかもしれない。

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 米国が貸し切ったのは、セキュリティー第一からである。プライドが高く、自由奔放な選手たちのプライバシーを保護して、リラックスさせる狙いもあるが、トップアスリートの安心、安全のためには、金に糸目をつけないという強固な姿勢で貫かれている。

 五輪男子チームは1992年バルセロナ大会から、全米プロバスケットボール協会(NBA)の選手で構成されている。マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソンら「ドリームチーム」と評されたスーパースターたちに五つ星ホテルを用意した。2008年北京と12年のロンドンはホテル、客船で過ごしたのは04年のアテネ以来となる。

 NBAは新たに、9年間240億ドル(約2兆4千億円)というテレビ放映権料の超大型契約を結び、金庫にはドル紙幣がうなっている。いかなるコストがかかろうが、とてつもない富を稼ぎ出す選手たちを守るために、豪華客船や超高級ホテルを貸し切るなど痛くもかゆくもない。

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 「彼らは東京でも選手村には入村しないと思う。既に、いろいろ動き始めているのでは」と日本のバスケットボール関係者は声を潜めながら続ける。「チャーター機で羽田に着くのが有力だけど、治安状況によっては横田基地に降りる可能性もあります。練習用の体育館だって、五輪組織委員会が指定したところを使わず、自分たちで見つけるんじゃないかな」

 客船の代理店は「今のところ打診などありませんけど、大型船が停泊できる港を東京湾に造っていますよね」と意味深長な言葉を口にした。都港湾局港湾整備部計画課に確認すると、「五輪に間に合うよう19年度内に『船の科学館』近くに大型客船用の埠頭(ふとう)を建設中です」との返答だった。

 莫大(ばくだい)な資金的裏付けがあるとはいえ、米国バスケットボール界の危機管理能力の高さには舌を巻く。

 船かホテルか、調査・検討は情報漏れを警戒して極秘裏に進められる。都と組織委は、羨望のまなざしを向けながら、じっと決定を待つしかない。