【ワシントン=渡辺浩生】バイデン米大統領は19日、国連総会一般討論で演説した。すべての国家の領土の一体性の尊重を定めた国連憲章の原則を強調し、ウクライナ侵略を続けるロシア軍の撤退を迫り、ウクライナへの支援継続を訴えた。国際機関の改革を推進し、新興・途上国の気候変動対策などへの関与を強化するとし、「より安全かつ公正で繁栄した世界」の実現に向けた米国の指導力発揮を訴えた。
バイデン氏は、領土獲得を目的とした威嚇・武力行使を禁じた国連憲章の原則を世界が放棄してロシアによるウクライナの占領を許せば「いかなる国家の独立も保証されない」と強調。「今日明白なこの侵略に抵抗し、明日の侵略者を阻止する必要がある」と訴えた。
新興・途上国にはロシアの侵略に中立的立場をとる国が少なくない。主権と領土一体性の普遍的原則を唱えることでウクライナの平和構築と新たな侵略抑止に国際社会の連帯を促した形だ。
バイデン氏は中国に関し「責任ある競争の管理を追求し、紛争に傾斜しない」と強調。北朝鮮の核・ミサイル開発を国連安保理決議違反と非難し、朝鮮半島の非核化へ外交努力を続けると訴えた。
バイデン氏はまた、途上国の過剰債務問題の温床である中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗を念頭に、新興・途上国への金融を柱とする関与強化を表明した。
バイデン氏はリビアの洪水被害など「気候危機」を人類の脅威と指摘。今月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で唱えた世界銀行など国際機関の制度改革を主導し、透明で公正な投融資により途上国の気候変動対策やインフラ整備を後押しすると訴えた。