セレッソ大阪のアカデミー(育成組織)が、風間八宏技術委員長を中心に取り組んでいる年齢、性別を問わない特別なトレーニング「スペトレ」の一環として、小学生から高校生までで構成された選抜チームと、関西大学の大学生との練習試合を大阪市此花区の舞洲天然芝ヤンマー桜グラウンドで行った。結果は4-4(0-0、0-1、1-2、3-1)。風間委員長は「ここ(スペトレ)は(普段から一緒にトレーニングしている)チームではないので、個人(の特徴)がすごく見やすい。成功する点も出るし、自分の足りないところもすごく出る。だから、選手のためにもすごくいい。それぞれが、いろんなことを感じ、刺激になったと思う」と総括した。
練習試合には小学校5年生から高校3年生までの男女約40人が参加。ミーティングで「1人でボールを奪う」「ボールを奪われない」をテーマに編集されたプレー動画を全員で見てイメージを高めた。風間委員長は「いったん相手を追いつめたら、逃がさない」「正確にプレーすることが速さだからな」などと動画のシーンに合わせて参加者にレクチャーした。
このあと、4チームに分かれて15分ずつ大学生チームと対戦。3チーム目が終わった時点で1-3と負けていたが、4チーム目が3点を奪って4-4で引き分けた。
小学校5年生の坂口勘太君は「僕は小学生の中でも体が小さい方だが、技術があると、体の大きい大学生相手でも普通にプレーできることが分かった。大学生は体も強くてスピードも速くて、うまかったのでちょっとびっくりしたが、普通にプレーするには技術が大事だなと思った」と感想を話した。
4チーム目にFWで出場し、3得点を挙げた中学3年生の塩尻哲平君はU-18(18歳以下)のチームへ昇格予定で「ピッチに入ったら学年とか年齢とかは関係ない。チャンスをものにできるような正確なタッチをもっと身に付けていきたい」と力を込めた。セルティック(スコットランド)でプレーする日本代表FWの古橋亨梧(きょうご)や、セレッソ大阪OBのJ1最多得点記録保持者、大久保嘉人さんらのプレーを参考にしているといい「トップチームと最年少プロ契約を結びたい」と希望を話した。
また、右サイドでプレーした中学2年生のMF片山祥汰君は「最初は緊張したが、技術があれば自分のプレーを出せる。抜け出しとか、丁寧にクロスを上げたりとか、アシストとかはできた」。高校3年生の中田昌那(まな)さんは守備的MFでボールをさばき「止める、蹴るが大事だと思っていたが、もっと意識するようになった。面ではなくて点でボールを止めるとか…。意識が変わってきた。うまくいって相手の逆をつけたときとかはうれしかった」と手応えを口にした。
「相手を1人でどうできるか、味方とどううまくやっていくことができるか…。だからこういう試合がすごく意味がある」と選抜チームが大学生と練習試合を行う意義について説明した風間委員長は「大学生の方が走るスピードは速いし、体の強さもある。ただ、(サッカーは)ボールを扱うゲーム。ボールをしっかり扱えれば、対等にプレーできる。あるいは、それ以上にプレーできる」と力を込めた。
「スペトレ」はJ1の川崎フロンターレや名古屋グランパスを指揮し、多くの日本代表選手を育てた風間委員長が監修した年齢や性別にとらわれないスペシャルなトレーニングの通称。セレッソ大阪のアカデミーに所属する小学生から高校生までの各年代のチームや、女子のガールズから選ばれた選手が同じグラウンドに集まり、ボールを「止める」「蹴る」といった基本動作から、技術を高め、個の力をつけるための特別なトレーニングに取り組んでいる。
2021年8月に始まり、その後はおおむね月1回のペースで開催。昨夏にはスペトレ参加者の特別チームをつくって初めての関東遠征を実施した。今回は参加人数を増やし、地元の関西大学と練習試合を行った。
風間委員長は「どこに行っても活躍できる選手にならないといけない。どんな相手と対峙(たいじ)しても自分でどう対応していくかというものも身に付けないといけない。同じ年齢、カテゴリーの中で、勝ち負けを味わうよりも大事なことは、自分のパイを大きくすること。(同じカテゴリーの)チームの中にいると(長所や短所が)隠れてしまうこともある。(年齢、性別に関係なくプレーする)ここだと隠しようがない。そうした個々のつながりがチームスポーツになっていく」と力説した。「個の力」に特化し、技術に徹底的にこだわった「スペトレ」の経験者から、未来の「サムライブルー」や「なでしこジャパン」を担う選手が誕生する日も、そう遠くないかもしれない。