京アニ公判

仕事転々、人生悲観の末に「怒り募らせた」 青葉被告、きょうも検察側質問

青葉真司被告=京都市伏見区(沢野貴信撮影)
青葉真司被告=京都市伏見区(沢野貴信撮影)

36人が死亡し、32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第7回公判は、19日午前10時半から京都地裁で開かれる。前回から始まった検察側の被告人質問で、被告は京アニと自身を比べて「光と影を感じた」と動機の一端を述べたり、平成20年に秋葉原無差別殺傷事件を起こした加藤智弘元死刑囚への「共感」を口にしたりした。舌鋒鋭い質問で、これまでに出た被告の発言の矛盾を明らかにしようとする検察官の質問はきょうも続く。

「光と影感じた」

前回公判では検察側の前に、弁護側による締めくくりの被告人質問が行われた。放火事件の動機について問われた被告は、自身を付け狙ったり京アニに手を回して小説コンクールで落選させたりした、という「闇の人物のナンバー2」に対する「『やめろ』というメッセージだった」と説明。その一方で「原稿(小説)を落としたりパクったりした京アニを根に持っていた」と〝逆恨み〟の感情も口にした。

ただ、ためらいもあった。犯行直前、約10分にわたり「(放火は)好ましいことではない」と実行を逡巡(しゅんじゅん)したという被告。しかしこれまでの半生を振り返り、「自分が落ちることで京アニが昇っていく。コントラスト、光と影を感じた」「どうしても許せなかったのが京アニだった」と語った。

京アニに立腹「そうなります」

質問者が検察官に代わると、これまでの被告の発言について詳細や矛盾を尋ねる質問が相次いだ。そもそも検察側は事件の本質を「筋違いの恨みによる復讐(ふくしゅう)」と総括。被告の自己愛的で他責的なパーソナリティー(人格)から、責任を転嫁して事件を起こしたと指摘している。

ナンバー2には被告を助けるような言動もあったという発言をしていたことから、「(ナンバー2と)完全に敵対していたのではないのでは」と問う検察官に対し、被告は「(例えるなら)右手で握手をしながら、左手で殴りあう部分も」と肯定。「火をつけたのは京アニに腹が立っていたからなのでは」と聞かれると、「そうなります」と応じる場面もあった。

秋葉原殺傷犯「他人事と思えず」

ガソリンによる放火がうまくいかなかった場合に備え、包丁6本を携帯していた被告。理由を問われると「(車で突っ込んだ後に刃物で歩行者らを殺傷した平成20年の)秋葉原の事件を参考にした」と述べた。事件を起こした加藤智大元死刑囚の境遇についても「他人事とは思えず、共感があった」と述べた。

派遣社員などとして仕事を転々としたり、人間関係に悩んで人生に悲観したりした点を加藤元死刑囚と自身の類似点として挙げた。「必然と見えないものに怒りを募らせていた」と被告。「検事さんには分からないと思いますが」と前置きした上で、「派遣を人間扱いしないとまで言わないが、いくらなんでもこんな扱いを、という扱いをする。それが事件のきっかけになった」とまくしたてる被告の様子を、遺族らは食い入るように見つめていた。

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